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第8話

◇◇◇  モゾモゾ寝返りを打つ。  柔らかい布団、こんなの久しぶりな気がする。  気持ちよくて伸びをしようとすると、トンと何かに当たった。  それが温かくて擦り寄れば、クスクスと小さく笑う声が聞こえ、ふんわりと頭を撫でられる。  佑里斗は穏やかな気持ちでゆっくりと目を開ける。  そうすれば隆志が──ではなく、昨日お世話になった琉生がいた。  ぼんやりしていた頭が一気に覚醒し、驚いて飛び起きると、隣に寝ていた彼を見つめて固まる。 「おはよう。よかった。元気そうだな。」 「……おはよ、ざい……ます……」  状況が理解出来ず、戸惑う佑里斗を置いて琉生も起き上がった。 「うん。服貸してやるからシャワー浴びてこいよ。その後朝飯食って、大学行くぞ。」 「……こ、ここ、どこ」  シャワーを促されたが、それよりもこんなに綺麗で広い場所を佑里斗は知らない。  ここに自分の足できた記憶もないので、もしかしてホテル?と頭を悩ませる。 「俺の家。」 「先輩の……? え、なんで……?」  戸惑いながら問いかけると、琉生は苦笑を零した。 「お前、昨日車で寝落ちしたんだよ。勝手に家に入るのはちょっと悪い気がして、だから連れてきた。……いいから早く風呂行ってこい」  琉生は未だに戸惑う佑里斗に着替えを渡し、風呂場を案内するとすぐに出ていって朝食の準備をする。  佑里斗は寝惚けていたようで、甘えるようにすり寄ってくる姿が可愛かった。  だから気が付けば頭を撫でていたし、自然と笑っていて。  飛び起きた時の顔はあまりにも面白くて吹きそうになったけれど、あんまり笑うとバカにされているんじゃないかと誤解をされそうなので我慢した。      そこまで考えた琉生は、一人首を傾げる。  自分から誰かの頭を撫でたりするのは初めてだった。  可愛いものを見ると、人は普段はしないような行動をとるらしい。 「……可愛いもの……」  朝食を作りながらポツリと呟く。  ──普通、男に擦り寄られてもそんなこと思わないよな……?  疑問を頭に浮かべ、手が止まる。 「あ、オメガだからか。」  アルファの本能が、オメガである佑里斗を『可愛い』と認識しているのだろうと結論付けて、一人頷いた。

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