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第9話

   一方の佑里斗はというと、温かいお湯を頭から被って昨日から今までの事を思い出していた。  恥ずかしい。いっぱい泣いて、そのまま寝ちゃうなんて。  しかも……寝ぼけていたとはいえ先輩に擦り寄ってしまった。  そして、一瞬でも隆志のことを思い出して嬉しくなってしまった自分に嫌気すらさす。  思っていたより引き摺っている隆志への感情が、早く消えてくれたらいいのに。  鏡を見て情けない顔に溜息を吐いた。  けれど幸いにも目元は腫れておらず、泣き腫らした目で大学に行かなくてもよさそうで安心する。  まあ、実はこれは眠ってしまった佑里斗が翌朝困らないように、琉生が濡れたタオルで冷やしてくれていたからなのだが、そんなことは勿論眠っていた佑里斗は知らない。  髪と体を洗い、お風呂から出た佑里斗は渡された着替えに手を伸ばす。  新品の下着はブランド物だ。  これっていくらするんだろう……。  佑里斗は後でお金を請求されたら困るなと思いながら、ノーパンは困るので恐る恐るそれを履いた。  借りた服を着てリビングに出ると、琉生は朝食の準備を終え、珈琲を飲んでいた。 「こっち来い。」 「は、はい。」 「冷める前に食べちゃいな。」 「あ、りがとうございます。いただきます!」  テーブルに並ぶ色鮮やかな朝食を感動しながら箸を持って平らげていく。  美味しくて、それを琉生に伝えると彼はほんのり微笑んだ。 「先輩。色々とありがとうございます。迷惑かけたのに、こんなに良くしてもらって……」 「別に迷惑じゃない。……一人で抱えられないことがあるなら、いつでも言え。」 「……はいっ」 「あと、あの家はやめとけ。」 「……でも、俺の住む家無くなっちゃう」  佑里斗は「だからそれは無理です」と苦笑する。  そうすると琉生はジッと佑里斗を見つめ、「ここに住む?」と軽く言った。 「ここ広いし。お前が嫌じゃないならいいよ。」 「え、ぇ……?」  金色の髪がそよそよと風に揺れていた。

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