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第11話
琉生はできれば目の前にいる佑里斗に、今より楽で安全な生活をさせてあげたかった。
せめて、倒れるくらい働くだとかそんなことは辞めさせたい。
「……折角助けた奴が、そのすぐ後に事件や事故に巻き込まれたら気分悪いだろ。」
「……そう、ですね。」
なので、なんとかしてここに留まらせようとそれなりの理由を考えた。
思いついたそれは佑里斗の良心を利用するようで若干申し訳なかったが。
「別にここにお前が住むからって俺のすることは変わらないし、お前の生活リズムを変えて俺に合わせろなんて言わない。」
琉生の行動は、佑里斗にとってはとても不思議なものだった。
昨日までは殆ど接点の無かった人だ。
それなのにどうしてここまで優しくしてくれるのだろう、と。
「一つだけ聞いてもいいですか。」
「……何?」
「何で俺に優しくしてくれるんですか?」
「……」
なので佑里斗は素直に疑問を投げ掛けたのだが、琉生はその疑問に対する答えを持っていなかった。
そんなのは琉生自身もわかっていない。
オメガに出会うのは初めてでは無いが、ここまで守ってあげなければと思う人間に会うのは初めてなのだ。
けれどまさか、それを素直に言うのは恥ずかしくて、適当な言い訳を探した。
「……後輩だし。」
「え、それだけで?」
「十分な理由だろ。」
「……お人好しって言われませんか?」
「言われことは無い」
その会話の後暫くすると、漸く佑里斗がここに住むことに対してウンと頷いた。
琉生はホッとして、バレない程度の小さな息を吐く。
「迷惑になったら追い出してくださいね。」
「は? 追い出したりしない。そういう時は話し合って解決する。」
「優しすぎるとは言われませんか?」
「……それも言われない」
笑っていいのかどうなのか。
そんな表情を見せた佑里斗に琉生はフッと笑う。
柔らかい空気が部屋を包む。
そうして二人の生活が始まった。
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