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第14話

 鍋が出来上がると二人は席に着いて仲良く同時に『いただきます』と手を合わせた。  殆ど初めてキムチ鍋を食べる佑里斗は、琉生に渡されたオタマでワクワクしながら具材を掬う。 「先輩、お皿ください」 「自分の分だけ入れな。気使わなくていいから」 「えぇ……だって……」 「いいから。これから先ずっとそうするつもりか?」  そう言われてしまうと何も言えなくて、大人しく自分のお皿に掬ったそれを入れた。  琉生は満足そうに頷き、佑里斗に続くようにお皿にクタクタになった野菜を入れていく。 「い、いただきます!」 「うん。はは、さっきも言ってたけど」 「いい匂い」 「早く食べな」  琉生に見られながら、少し緊張して遂に野菜を口に入れた。  途端ピリッとした刺激とコクのある旨味に自然と口角が上がる。 「美味しい!」 「よかった」 「先輩も食べて!」 「食べるよ」  クスクス笑う琉生は、目をキラキラさせて食べる後輩が可愛くて仕方が無かった。  もっと美味しいものをたらふく食べさせてあげたくなる。  なので『食べる』と言ったことも忘れて佑里斗をじーっと眺め続けていたのだが、流石にそんなに眺められると佑里斗も不思議に思ってコテッと首を傾げた。 「? 俺の顔、なんかついてます……?」 「あ、いや」 「全然進んでないですよ。美味しいのに」 「うん。食べる」  箸を持った琉生はようやく食事を始めて、キムチ鍋の美味しさに自分で『天才』と思った。 「俺天才かも」 「天才!」  気づけば口に出してそう言っていて、佑里斗はウンウン頷く。 「明日もこれ食べたいですね」 「そんなに美味しい?」 「うん。ピリッとしてるの好きです」 「嬉しいな」  そうしてエヘエヘと笑いながら食べ、お腹がどんどん膨れていく。  そのうち苦しくなってきて、くふっと小さく息を吐いた。 「お腹いっぱいになった?」 「ん、すごく……苦しい……」    お腹を触って膨れたことを知らせる。  まだ少しだけお皿に残っていたお野菜を平らげて、お箸を置き手を合わせた。 「ご馳走様でした」 「うん。苦しいならお皿置いといていいからそっちでゆっくりしてな。俺はまだ食べるから」 「あ、いや、ここに居ます」 「? 何で?」 「一人で食べるのは寂しいし」  苦笑しながら思い出すのは、番が居た生活から、居ない生活に変わった途端に感じた寂しさ。  特に食事の時は会話をしながら食べていたのに、一気に無音に変わってしまったから余計に孤独を感じていた。 「だから、もしよければ、これからも時間が合う時は一緒にご飯食べられたら……嬉しいです」 「もちろん」 「……負担にならない?」 「ならないよ。一人より二人で話しながら食事できた方が楽しいし」  琉生は柔らかく微笑む。 「昼はそれぞれ講義があるから難しいかもしれないけど、朝と夜はなるべく一緒に食べよう」 「ぁ……う、嬉しい。ありがとうございます」  佑里斗も同じようにキュッと小さく笑ってみせた。

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