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第15話

 一緒に生活を始めてからしばらく。  二人の距離は段々と縮まってきて、佑里斗が変に気を遣いすぎることも少なくなってきた。  体調はといえば倒れた頃を思えば随分回復はしているけれど、全快とはいえない様子。  そもそも番を解消するにはオメガの体に大きな負担が掛かる。それにいくら隆志から治療費を貰って治療をしたとはいっても傷つけられた体はそう簡単に完治しない。 「今日は行くのやめとけ」 「……そんなに顔色悪い……?」 「うん。真っ白。いつ倒れてもおかしくないと思う」 「……でも単位もあるし……。やっぱり行かなきゃ」 「……」  確かにどこかフワフワしていて、若干の吐き気を感じていたけれど、倒れるまでではないだろうとソファーから立ち上がる。  それをジッ……と見た琉生は『確かに単位のことがある……』と本当は休ませたいのを我慢して優しく佑里斗の頭を撫でた。 「無理だけはすんなよ。やっぱりおかしいなって思ったらすぐに連絡して。迎えに行くから」 「え、迎えにはこなくていいです。一人で帰るし、大丈夫」 「先輩からの命令です。言う事を聞きなさい」 「なにそれ」  二人は真剣に話していたのだが、佑里斗は思わずフッと笑ってしまい、それにつられるように琉生も破顔する。 「先輩命令は絶対?」 「絶対」 「でも先輩にも迷惑かかると思うんですけど……」 「俺が言ってるんだから迷惑とか考えなくていいって」  琉生が少し呆れたようにそう言うので、佑里斗は早々に「わかりました!」と返事をする。 「うん。あ、あと、今日は心配だから昼飯一緒に食べたい」 「え」 「え?」  これまで大学でお昼を一緒に食べたことがない。  もともと朝と夜はなるべく一緒に食事をするという話であったから、お昼は別々で食べている。  佑里斗は基本的に同じ学年の友人たちとお昼を摂ることが多く、今日もそうなるだろうと思っていたので、まさかの提案に驚いてしまった。 「え、やだ?」 「あ、いや、時間が合うなら……」 「わかった。午前の講義終わったら連絡して」 「はい」  いつもより過保護気味な気がする。  佑里斗はチラッと琉生を見上げて、目が合うとなんだか酷く恥ずかしくなってゆっくり視線を逸らした。  大学に行くのも大体別々である。  殆ど毎日佑里斗の方が早く家を出て、朝一番の講義を受けている。  学年が上がると空きコマが増えるので、琉生はゆっくり準備することが多い。 「じゃあ、あの……先に出ます」 「一緒に行こうか?」 「あ、それはダメです」  今日は佑里斗の顔色が悪かったので、まだまだ家を出る時間では無いが準備をしていた。  が、ハッキリと佑里斗が断ったのでぽつねんとそこに佇む。 「先輩はゆっくり来てくださいね」 「……なんで」 「なんでも」  この先輩は目立つ。何をしていなくても顔はいいしスタイルもいい。  ダルそうな服を着ていたって、だらしなく見えない。  そんな彼と一緒に登校すると、嫌でも佑里斗は人に見られることになる。  実の所、佑里斗は人目を気にする性格なので、目立つことが嫌なのだ。 「……わかった」  納得のいってなさそうな琉生だが、あまり強引なことをしたところで嫌われるだけだと、大人しく引き下がった。

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