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第31話

■ 「先輩、ちょっと……俺達あまりにも仲良さげに見えると思う。」  あれから数日後。  佑里斗は大学から帰宅した琉生に申し訳なさそうにそう言った。  キョトン……とした琉生は小首を傾げる。  まるで全く意味がわからないという風に。 「なんで?」 「……俺の話しかけすぎ」 「挨拶してるだけ」 「会う度に挨拶って……仲良すぎでしょ。」  そう、琉生はあれ以来大学で佑里斗を見掛ける度に声を掛けていた。「お疲れ」とか「ご飯食べた?」とか。  それはほぼ毎日会う度に行われるので、佑里斗はついに今日、智から「あの先輩と仲いいんだな」と言われてしまったのである。 「お前が先にお疲れ様って言ってきたのに」 「そうだけどぉ……」  モジモジする佑里斗を、琉生は腕を組んで見下ろす。 「……話しかけられるの嫌? ……お前見ても無視しなきゃいけない?」 「そ、そうとは言ってないです……」  佑里斗は何と伝えればいいのかわからず、頭を悩ませる。  相変わらず琉生は表情をあまり変えずに、けれど佑里斗から見て分かるほどにはショボンとしていた。 「後輩と仲良くしたい。」 「……えぇ?」 「後輩が勉強についていけてるか気遣うのは、先輩の役目だと思う。」 「じゃ、じゃあ、俺だけじゃなくて、俺の友達とも仲良くしてください。」  なんとか佑里斗と話す口実を、と思っていただけなのだが、まさかの佑里斗だけじゃなく、彼の友達とも仲良くしてくれと言う。  琉生は暫く悩んだあと『それで佑里斗と話せるならいいか』と一つ頷いた。 「わかった」 「え、本当に?」 「うん。」  佑里斗はまさか友達とまで仲良くしてくれるとは思わなかったので、頷いてくれた彼に驚いて目を見開く。  そんな佑里斗の頭をガシガシ撫でた琉生は先輩らしく「困ってることは無いか」と聞いた。 「ぁ……無いです……」 「そうか。何かあったらいつでも言え」  そうして琉生は何かがあった時、佑里斗が一人で抱え込まず自分を頼れるようにと、道を一つ作ってあげた。

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