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第43話

 固まった空気に琉生は思わず「ごめん」と呟いた。  佑里斗は「はは、」と力なく笑う。  浮気をされ番を解消することになった佑里斗にとって、琉生の言った言葉は少し重たくて。 「嬉しかったから、思わず言ってた。ごめん」 「いや、いいですよ。喜んでくれたなら嬉しい!」  変な空気を変えようと佑里斗は態とらしく明るく振舞った。  琉生はそれに気づいていたけれど、またさっきのような空間にしたくなくて、「うん、俺も嬉しい」と彼の言葉にノッた。 ──のだが。  夜、貰ったばかりの服に腕を通し、一人でベッドに寝転がる琉生は胸をモヤモヤさせている。  けれどモヤモヤする理由がハッキリしない。 ──恋人……。恋人かぁ。俺って、あいつの恋人にはなれないのかな  そんな考えが頭を過り、『あれ?』とすぐにパチパチ瞬きをした。 ──俺あいつのこと好きじゃん。恋人になれないのかなって、それって好きってことと同じじゃん……?  琉生はゆっくりベッドから上体を起こすと、もう一度『好きじゃん?』と頭の中で繰り返した。  すると一気に恥ずかしくなってワシャワシャ髪を掻き乱して立てた膝の間に顔を埋める。  なんせ他人に『好き』を感じたのは初めてだった。  ここからどうやってアプローチをして、どうやって恋人になるかがわからない。  その上、相手は一度番を解消した過去があるわけで。  そんな簡単に心が通じ合うかと言われるとすぐには頷けない。 「……ちゃんと話したい」  そう思った琉生は、時計を見ることなく佑里斗の部屋に突撃することにした。

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