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第44話

■  ノック音にビクッと肩を揺らす。  佑里斗はちょうど眠る前で、ベッドに入ろうとしていたところだった。  返事をするとドアが開いて、神妙な面持ちの琉生が黙って見つめてくる。 「先輩?」 「……話、聞いてくれないか」 「話? うん。聞きますよ。何かあった?」  琉生が改まってそんなことを言うのは初めてで、ドキドキしながら彼の言葉を待った。  彼は深呼吸をし、覚悟を決めたようにゆっくり口を開く。  空気がやけに緊張していた。 「俺、お前が好き」 「!」 「俺のその気持ちが、お前に伝わってほしい」  佑里斗はギュッと手を握る。琉生がからかっているわけではなく、本気で『好き』と想ってくれているとわかったから、なんと言えばいいのかわからなくて。 「……お、俺は、もう番とか、考えてなくて……」 「……うん」  そう言いながら、彼と暮らした日々を思い返す。それはこれまでの人生の中で最も明るくて充実していた。  毎日帰れば話してくれる人がいて、自分を同等に扱ってくれて。  そんな人とこれから先も一緒に過ごせたなら。 「でも……どうしよう。先輩となら、一緒にいたいって……思っちゃった」  佑里斗は泣き出しそうな笑顔で、声を震わせながらそう言った。

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