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第45話
琉生は佑里斗の泣きそうな笑顔を見て、咄嗟に近付き自分よりも細い手首を掴んだ。
佑里斗は驚きながらも彼を見上げて、視線を逸らすことは無い。
「それって……俺の気持ち、受け止めてくれるってこと……?」
「ぁ……」
「違う? ちゃんと言ってくれないと勘違いする」
佑里斗は困惑してしまう。
なぜなら考えるより先に言葉を口にしてしまっていたから。
琉生に伝えたくせに、本当にこれでいいのかと悩んでいる。
「俺……一回は、違う人と番になってる……」
「うん」
「なのに……真っ白じゃないのに、今後ずっと俺と一緒にいるの、嫌にならない……っ?」
琉生はポカンとして「いや、あのさ」と少し戸惑ったような声を出した。
「これまでどうやって生きてきたかは、俺にとってそれ程重要じゃない。嫌になんてならないよ」
「……」
琉生の強い視線に佑里斗は吸い込まれそうになる。
彼の言葉には力があって、自然に心に届きストンと落ちた。
「短い間だけど、お前と一緒に過ごしている内に好きだと思った。一度は別の人と番になったってことも、初めから知ってる。それでも好き」
琉生は隠すことなく素直に気持ちを吐露した。
彼の『嫌にならない』『それでも好き』という言葉に佑里斗は堪えていた涙を一粒零す。
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