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第47話

■  恋人同士となった二人は、今までと特に変わらない生活を送っている。  けれど佑里斗はやはりまだオメガのことを隠しているので、琉生には『恋人がいることは言ってもいいけど、誰とは言わないでほしい』とお願いをした。 「もちろん。それに別に恋人がいるってことも聞かれなきゃ言わないし、その辺は大丈夫」 「……先輩」 「何」  相変わらず優しい人だ。  自宅で向かい合って食事をとる中、彼に触れたくなった佑里斗はそろりと手を伸ばす。 「? 何?」 「……握手しませんか」 「は? え、握手? 何で? いいけど」  佑里斗の奇行に琉生は不思議に思いながらも差し出された手に自らのそれを重ねて握る。 「で、これは何の握手?」 「えっと……。えー……ちょっと、先輩に触れたくなったと、言いますか……」 「それで握手は固いって」  琉生はくすくす笑って手を解き『ご馳走様』をすると立ち上がる。そのまま佑里斗の傍まで行くと不思議そうに顔を上げた彼を躊躇なく抱きしめた。 「わっ!」 「恋人になったんだし、これくらいはいいだろ」 「……家の中で、だけ」 「うん。嬉しい」  佑里斗も琉生の背中に手を回してひしっと抱き合う。  初めて一緒に眠った夜よりは忙しそうにしていない彼の心臓。一定のリズムは眠気を誘う。 「先輩」 「……なあそれ、先輩ってさ、もうやめよ。名前で呼んで」 「ぉ……」 「……まさか忘れた?」 「忘れてないよ!」  今まで呼んでこなかった名前で彼を呼ぶのはなんだか恥ずかしい。  唇を口の内側に隠すとギュッと強く目を瞑ってから顔を上げた。 「りゅ、琉生……」 「うん。なあに」 「ぃ……ぃ、ぁ、なんでも、ない……」 「かわい……」  思わず、と言ったように漏れた琉生の一言に佑里斗はブワッと顔を赤く染めた。

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