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第59話

「……家で話そう。ここじゃ誰に聞かれてもおかしくないから」 「……うん」  二人でなら共有出来て、他の人に聞かれるのは良くない話。  恐らくそれは性別のことだろうと予想した佑里斗は、バレてしまったのだろうかとテーブルに視線を落とす。 「なるべく早く帰るようにするから、起きて待っといて」 「でも、忙しいんでしょ? 無理に早く帰ってこなくても……」 「できるだけ頑張るから、待ってて」  琉生が真剣に言うので、佑里斗はコクッと一度頷く。  午後からの講義が不安だけれど、何事も起こらないように祈るしかなかった。 ■  琉生と別れた午後。  佑里斗は緊張した面持ちで講義室に向かい、隅っこの方に腰を下ろした。  まだ智や只隈、その他の取り巻きはいない。  このまま講義が始まって、関わることなく終われたらいいのだが、そんなに上手くはいかない。  賑やかに話しながら講義室に入ってきた彼ら。  佑里斗を見つけると智を筆頭にゾロゾロ歩いて周りに座り始める。 「高津、美澄先輩と飯行ってきたのか?」 「……あ、うん」  先程佑里斗を『変』だと言った只隈に声をかけられ、本人が聞いていたことを知らなかったとはいえ、よくも平気な顔で話しかけられるなと思う。 「ぶっちゃけ高津と美澄先輩ってどんな関係?」 「どんなって……普通に、先輩と後輩だよ」  何でそんなに知りたがるんだろう。  智は佑里斗と只隈の話を静かに聞いているだけで、特に何も話してこない。 「美澄先輩ってアルファなんだろ?」 「……あんまり性別の話をするのはよくないと思うけど」  軽く注意をすれば、只隈はあっけらかんと笑う。 「アルファだからいいじゃん。オメガなら別だろうけどなあ」 「……別?」 「だってあいつらって落ちこぼれじゃん」  呼吸をするように差別発言をする只隈に、佑里斗は表情を消した。  

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