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第61話
午後の講義を受け終えると、佑里斗はすぐに帰路に着いた。
今日は少しばかり疲れてしまった。琉生はなるべく早く帰ってくると言っていたが、きっと遅くなるのはわかっている。
家に着くと残り物の白米とインスタントの味噌汁を食べて、直ぐに洗濯物を畳んでお風呂に入った。
体を洗った佑里斗は、湯船に浸かりながら只隈とはもう関わりたくないな、と縁に頭を預けてもたれる。
「好きでオメガに産まれたんじゃないし……」
ポチャンと水の音。
やけに大きく響いたそれが虚しさを助長させる。
お風呂から出たら課題と予習復習をしなければならない。
する気には全くならないけれど、頑張らないと試験の時に困る。
佑里斗はザバッと湯船から出ると軽くシャワーを浴びて浴室を出た。
琉生が帰ってくるまでは勉強時間にすることにして、テーブルにノートと教科書を広げ、まずは課題に手をつける。
きっと琉生がこれを見たらものの数分で終わらせてしまうんだろうな。彼は優秀で、自分とは違う。
彼は誰からも羨まれるアルファで、自分は皆に嫌われるオメガ。
只隈のあの差別発言は、きっと多くの人達が思っていること。
課題に集中どころか、マイナスな考えが頭に浮かびだした時ガチャっと玄関が開く音がして、小さく身体を震わせた佑里斗は、玄関に繋がる廊下の方に顔を向ける。
すると少しして琉生が現れて「ただいまぁ」と言いながら床に荷物を置いた。
「あ……おかえりなさい。ご飯は? 食べた?」
「うん」
琉生はすぐに佑里斗の傍に来て、ノートを覗く。
「課題? すぐ終わりそう?」
「すぐには無理です……」
「じゃあ先に風呂入ってくる。上がったら昼間に言ってた話、するか?」
彼の言葉に静かに頷くと、彼は佑里斗の頭をわしゃわしゃと撫でてお風呂に入りに行った。
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