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第63話

■  佑里斗と琉生が予想していた通り、佑里斗がオメガだという噂は瞬く間に広まっていった。  事実ではあるけれど、佑里斗が何も語らないので周りは遠巻きにヒソヒソと隠れて話している。    おそらく只隈が広めたであろうそれ。  いたる所から『ほら、あいつがオメガの……』と言われるようになってから、彼は佑里斗の傍に寄り付かなくなった。  大学生活も息苦しくなってきたけれど、佑里斗の隣にはいつも誰かがいてくれる。  家でも時間が合えば大学でもずっと一緒にいてくれる琉生が。どうしても一人になってしまう時は智がいた。  噂は耳に入っているだろうに、智は佑里斗が講義室で一人ぽつねんとしていると明るい声で話しかけてくれるのだ。    どうしてもオメガには厳しい世間なので、一人になると嫌がらせをされるかもしれないと思っていたが、誰かが傍にいてくれるとその不安も薄れる。 「──でさ、結局のところはどうなん?」  お昼休み。今日は智と二人で学食を食べていた。  向かいあわせの席で『いつも通り』を過ごしていたのだが、突然智から真面目なトーンでそう聞かれた。 「えっと……何が?」 「しらばっくれんなって。噂のことだよ」  ギョッとした佑里斗は、周りをさりげなく見渡す。   「なんでそんなこと聞くの」 「なんでって、気になるじゃん、さすがに」  いつも思うけれど、どうして智は人のいるところで繊細な話をするんだろう。  佑里斗は小さく息を吐く。 「二人の時に話すよ」 「……わざわざ二人の時ってことはさ、マジなわけ?」 「……」 「え、嘘だろ」  固まった佑里斗を見て、智は瞠目した。

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