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第70話

 夜になりそれぞれがお風呂に入ったあと、二人はリビングのソファーにくっつくように座ってテレビを見ていた。  それは佑里斗が安心を求めて琉生から離れたがらず、琉生もほんの少しでも安心させてあげたいと思っていたからである。  佑里斗がフワフワ欠伸を零す。  「眠たい?」と聞かれたので左右に首を振った。 「さっきから何回も欠伸してるけど」 「……眠たいけど、寝たくないの」 「そっか」  佑里斗はポスッと琉生の方に頭を預け、時折チラッと彼を見上げる。 「キスしたい」 「うん」 「ダメかな」 「そんなわけないだろ」  そっと唇が重なる。  何度も繰り返しているうちに物足りなくなってきて、佑里斗はチロッと彼の唇を舐めた。  瞠目した彼は目を細めると段々とキスを深いそれに変えていく。 「っん、ふ……」 「はぁ……」  佑里斗が琉生の首に腕を回せば、彼も背中に手を回して体を支えてくれる。  唇が離れるとそのまま強く抱きついた。 「今日も一緒に寝よ」 「うん」 「琉生の部屋でいい?」 「いいよ」  琉生は佑里斗を抱きしめたまま立ち上がり、部屋を移動する。  ベッドにごろんと二人で寝転がり、至近距離で見つめあった。  ふいに琉生の顔が近づいて、佑里斗の鼻先にチュッとキスをする。 「ふふ、くすぐったいよ」 「……佑里斗、好きだよ」 「俺も好きだよ」 「車でも言ったけど、我慢しなくていいから。どんなに些細なことでもいい。嫌なことがあれば言って。一人で抱え込まないでくれ」  自分に出来ることなんて少ないけれど、そう言葉を付け足した琉生は、それでも佑里斗が傷つかないでいてほしかった。 「大丈夫だよ。あのね、これまでも同じような事が何回もあったんだ。もっと酷いことを人前で言われたこともあるよ。オメガは発情しかできないくせにって、中学の時にね。だから今日のことは……確かに傷つくけど、大丈夫」  そう話す佑里斗の表情はどう見ても『大丈夫』では無かった。  琉生は彼の言葉を理解したが納得はできず、佑里斗を抱きしめながら下唇の内側を噛んだ。

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