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第73話

 松井のおかげか、午前の講義を終え昼休みになるまでも只隈達から悪口を言われることは無かった。  約束があるので食堂に向かって、中をチラチラ見ていると後ろから名前を呼ばれて振り返る。 「あ、先輩!」 「お疲れ〜!」  そこには琉生と松井がいて、二人は佑里斗と一緒に学食を買うと席に着いた。 「あのあと大丈夫だった? 何か言われたり、されたりしてない?」 「はい! 大丈夫です! ありがとうございます!」  松井はずっと気にかけてくれていたらしく、佑里斗はニッコリ微笑むと琉生の方を向く。 「松井先輩が助けてくれたんだ」 「聞いた。やっぱり今後は俺と一緒に登校しよう」 「うんうん、その方がいいよ。どっかで待ち合わせてさ、美澄が難しい日は俺が一緒に行くし」 「それは大丈夫。俺達一緒に住んでるし」 「……お?」  佑里斗は『噂で流れていることとはいえ、言っちゃうんだ!?』と思い少し驚いてしまう。  松井は首を傾げ、佑里斗を見てから琉生を見た。 「お前一人暮らしって言ってなかったっけ?」 「言ってたけど嘘。一緒に住んでる」 「……え、何で?」 「佑里斗が倒れてたから保護した」 「保護……?」  そんな簡単に人を保護できるものなのか……?  きっとそう思っているに違いない。松井の表情は不思議そうだ。 「あ、あの体調が悪かった時があって、倒れちゃったんです。そこを先輩が助けてくれて、色々あって住まわせてくれてて」 「なるほど?」  まだ納得していない様子の松井だけれど、流石にここで自分達の関係を明かすことはできない。  なので佑里斗は後で琉生と話をして、もしも彼が『いいよ』と言ってくれたのなら、今度あまり人が居ないところで本当のことを松井に伝えようと思い一人頷いた。

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