77 / 132
第77話
なかなか止まらない涙。
佑里斗はそのうち『何をしてるんだろう』とぼんやり宙を見た。
自分の気持ちを伝えたところで、差別する人達には届かない。
それはわかっているけれど、謝りたいと言った智を跳ね返すような態度もよくなかったかもしれない。
俯いて溜息を吐く。
そして少し気持ちが落ち着くと、琉生との待ち合わせを思い出して急いで立ち上がった。
パタパタ慌てて彼の待つ駐車場に行けば、琉生は佑里斗を見てホッとしたあと、眉間にググッと皺を寄せ「乗って」と一言言う。
「何で泣いてんの」
「え、っと……」
「言いたくないなら無理には聞き出さないけど、今から行くって言っておいてなかなか来ないし、電話も出ないし……来たと思ったら泣いてるし。すげぇ心配した。せめて何かあったなら連絡してくれ」
車に乗るとそう言われ佑里斗は反省した。
彼には心配をかけてばかりである。
「ごめんなさい」
「……。いや、俺がごめん。責めるような言い方した。心配だっただけ。怒ってないよ」
怒られていて怖いとは少しも思わなかった。
彼の言葉の端々からは優しさが滲み出ているから。
「……実は、智に呼び止められて」
さっきあったことを佑里斗は琉生に話すことにした。
謝りたいと言われた時、受け入れるべきだったのか。
受け入れられなくても、せめてちゃんと話は聞いた方がよかったのか。
琉生は車を運転しながら佑里斗が話す内容を聞いて顔を顰めていく。
「そんなの聞いてやる必要ないよ」
「……うん。ただ本人も勇気出して言ってきたことだと思うから、突き放すのも良くなかったのかなって。謝罪を受け入れる気は無いけど、聞くことはできたかもしれない」
友達だったから、もう少し優しくあるべきだったのか。
これまでの人生、友達がいなかったのでわからない。
「でも、あいつに謝りたいって言われた時、聞きたくなかったんだろ。てことはそれがお前の本音だよ。心と体が嫌がったんだ。だから無理に聞いてやる必要は無い。お前が我慢しなくていい」
「……そうかなぁ」
「そうだ。傷付けてきたやつに優しくする必要は無い」
佑里斗は「そっかぁ」と呟くように零すと、少し胸が軽くなった気がした。
ともだちにシェアしよう!