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第79話
「申し訳ないとか思わなくていいから。心配だから一緒に行きたい。……佑里斗が迷惑ってなら仕方ないけど」
「そんなわけないよ!」
「ならあんまり寂しいこと言わないで」
「ぁ……ごめんなさい」
いつも一人でなんとか踏ん張ろうとしてしまうのは佑里斗の悪い癖だ。
琉生はせっかく恋人になったのだし、もっと頼ってほしかった。
「俺たちさ、恋人同士だろ」
「う、うん」
「もっと頼って。俺は自分の知らないところで佑里斗が傷ついてたり、泣いてたりするのは嫌だ」
「……」
素直な気持ちを吐露した琉生は眉を八の字にして佑里斗を見る。
「大変な時こそ支え合いたい」
「……そう、だよね」
「一人で頑張ることだって大切なのはわかるよ。でもそれでもしもお前が崩れた時、俺は絶対後悔する」
『何も出来なかった』『何も知らなかった』そんなふうに後悔するのは嫌だ。
「た、頼ったら、嫌がられるかもしれないから……」
「え?」
ポロッと佑里斗の目から零れた涙に琉生はギョッとして、慌ててティッシュを手に取り隣に座って涙を拭ってあげる。
「前の番が、そうだったから」
「……」
「一人でできることはしなきゃって、どうしても思っちゃう」
前の番の話が出てきたのは少し癪ではあるし、そいつのせいで佑里斗が我慢しがちなのかと思うと腹立たしいけれど、それを堪えて佑里斗をそっと抱きしめる。
「自分が頑張ればいいとか、我慢すればいいとか……そういう自己犠牲は綺麗かもしれないけど、俺はあんまり好きじゃない」
「う、ん……」
琉生の言いたいことを理解して佑里斗は複雑な感情だった。
正直どうして泣いているのかもわからないままだ。
「ん、あの……ごめんね。これからはそういうことしないようにする」
「あー……。怒ってるわけじゃないから、ただ俺の気持ちも知ってほしかったんだ。泣かせたいわけじゃなくて……」
優しく濡れた頬を拭ってくれた琉生の手にそっと擦り寄った。
「わかってる。俺の事を想ってくれてありがとう」
琉生の腕の中でそっと目を閉じれば優しく頭を撫でられる。
琉生の背中に手を回し、ギュッと強く抱きついた。
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