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第84話

■  佑里斗が密かに懸念していた時間が来てしまった。  その講義は時々グループワークがある。  そして今日はオメガだと知られてから初めてのグループワークで、誰一人として佑里斗を誘ってくれる人はいない。  ましては自分から声をかける勇気も出なくて、膝の上でグッと拳を握ったまま『どうしよう』と焦ってソワソワしてしまう。  隅っこでそれとなく過ごそうかとして、教授に見つかってしまいポイっと放り込まれたグループでは、皆嫌そうにして佑里斗から顔を逸らした。  仲の良くない話したこともない人達なのに、オメガというだけで嫌われている。  切ないや悲しいは遠に通り越してしまったけれど、気まずさだけはどうにも拭えない。  ヒソヒソと周りから聞こえてくるのは『あのグループの奴ら可哀想』だとか、そう言う声ばかり。  無視して涼しい顔をしていたいけれど、佑里斗の心はまだそこまで大人になれていない。  俯いたまま、けれど迷惑は書けないようにグループワークには参加して、解散しても良くなるとそこから逃げるようにして一人の席に戻る。  続く教授の話を黙って聞いて、時間が来るとすぐに講義室を出た。  お昼の時間になるので琉生に連絡をして、食堂に向かう。  食堂で彼の姿が見えて、佑里斗はタッタッと走った。  琉生の隣に立って「先輩」と声をかけると、琉生は「おつかれ」と言って佑里斗の頭をわしゃわしゃ撫でる。

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