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第96話

 その日の夜、佑里斗は早速アルバイトを探した。  スマートフォンを使い検索をかけ、気になるところを見ていると「俺も見ていい?」と琉生が聞いてきたので一つ頷き、彼を隣に座らせて画面を見せる。 「ここ、どうかな」 「……俺さ、こういうバイトとかわかんないんだけど、安全?」 「えっと……どういう面の安全?」 「絡まれたりしない?」 「ああ、そういうのは無いと思うよ」  そこまでわちゃわちゃしながらする仕事でもないし、基本的に一人で黙々とできるものだし。  そう説明すれば「じゃあいいと思う」と言うので、クスッと笑い彼にもたれ掛かる。    琉生の手が肩に回され抱きしめられる。  より体が密着すると、胸の中がホワホワと温かい。  このままちょっと眠りたいなと佑里斗が目を閉じようとした時、突然頭の中に試験の時のことが浮かんだ。 「そうだ! そういえばテストでわかんないところあったんだった!」 「……今?」 「だって気になる……教えて?」 「いいけど……」  琉生は『もっとくっついていたかったけど』と思いながら、佑里斗が持ってきた本を睨みつける。 「あ、コレか。俺もこれ苦戦した。あの教授この問題大好きだからなぁ。今年も試験に出たんだ?」 「うん。合ってるかどうかが気になって……」 「あー、これはな──」 ‪ 琉生に教えて貰いながら、佑里斗は真剣に問題を解いていく。  ヒントを貰いつつ、何度目かの挑戦で一人で問題が解けた時には二人で拍手して喜んだ。 「コツ掴んだら簡単かも……。ありがとう!」 「ううん。他は? もう大丈夫そう?」 「うん!」  勉強を終えるとソファーにもたれかかった彼に、飛びついた佑里斗は、そっとキスをして控えめに微笑む。 「琉生はいつも優しいね」 「そりゃ好きな人には優しくしたいですし」 「あんまり怒ったりしないし……。俺に腹立つことは無いの?」 「隠し事されるのは嫌だよ。……だからバイトの件、約束は守って」 「それはわかってるよ」  抱きしめ返され、トクトクと琉生の落ち着いた心臓の音に癒される。  ずっとくっついていたい。  そんな佑里斗の気持ちが伝わったのか、琉生はふんわり微笑むと優しくキスをしてくれる。  佑里斗はその時『彼のことを全部知りたい』と強く思った。

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