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第98話
「笑わない?」
「笑わない」
「……貧相でも嫌じゃない?」
「俺はお前が好き」
琉生の言葉に心がポッと温かくなって、佑里斗は彼に見られながらゆっくり服を脱いだ。
盗み見た恋人の表情は柔らかくて、そっと伸びてきた手が優しく肩を撫で背中に回る。
「可愛いし、綺麗だよ」
「あ、あぅ……ありがとう」
「下も脱いで、早く入ろ」
「うん」
琉生は潔く下着を脱ぐと、佑里斗を待つことなく先に浴室に入る。
それは佑里斗が恥ずかしがって動けなくなるのではないかと思ったからの行動だ。
案の定、佑里斗は彼が先に入ってくれたことに安心して下着を脱ぐと遅れて浴室に入った。
■
ポチャンと水音が大きく聞こえる。
それくらい二人は緊張して上手く会話を続けられなかった。
琉生の心の中は、『抱き締めたい』『キスしたい』『エッチしたい』と好きな人に対する欲望で満たされていたので、変なことを言ってしまわないように我慢している。
一方佑里斗の心の中も、『キスしてほしい』『ちょっとだけでも触ってくれないかな』と落ち着かずにソワソワしていた。
先に我慢の限界が来たのは佑里斗のほうだった。
勇気を出して彼の名前を呼び、そっと手を取る。
「き、キスしてくれませんか。ていうか、してもいいですか」
「っ!」
「だめ?」
「え、い、いやいや、よろこんで」
二人は静かに顔を近づけ、触れるか触れないかの距離で目を閉じそっと唇を重ねる。
何度も角度を変えてキスをし、佑里斗は彼の首に腕を回して『もっと』と強請った。
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