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第109話

 朝食を食べ終えると佑里斗は早速履歴書を書き始めた。  性別の欄には男女の他にアルファ・ベータ・オメガと書かれてあり、馬鹿正直に埋めようとして琉生に止められる。 「それ別に書かなくていいやつだから」 「……やっぱり選択肢が書かれてるなら答えないと、後で騙したって言われたら怖いよ」 「法律で決まってんの。選択肢は書かれてあるけど性別に関してはほとんどが任意だから。何でもかんでも正直に言わなくていい」  琉生の言う通り、性別に関することについては『男女』の欄さえ明確にしていれば問題は無い。  人口のほとんどがベータなので、履歴書のその部分が空欄になっていたとしても『きっとベータだろう』で大体は済む。 「……でも、前の発情期から数えるとそろそろ来てもおかしくないよ」 「……あ、そうか」  琉生はハッと瞠目し、眉間に皺を寄せる。 「え、でもじゃあどうすんの。シフトとか組めなくない?」 「……一週間ごとにシフト出せるところにする」  前に見た検品の仕事は確かそうだった気がする。  視線を逸らして床を見れば、琉生が困ったように笑ってワシャワシャと佑里斗の頭を撫でた。 「まあ基本は一緒にいるし、少しでも匂いがしたら伝えるよ」 「ありがとう」 「薬は絶対にいつでも持ってろよ」 「うん」  結局選択肢の欄は開けたまま、履歴書を書き終えた佑里斗はググッと伸びをしてすぐに脱力した。

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