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第110話

■  佑里斗のバイトは思っていたよりもすんなりと決まった。  面接の終わりに「一緒に頑張りましょう」と言われてその日のうちに決まったのだ。  早速明後日からシフトに入ることになり、早くも緊張していたのだけれど、自宅に帰れば琉生がソファーにうつ伏せで倒れていたので、そんなことより彼が気になった。 「琉生、ただいま」 「……ん」 「あれ、寝てる?」 「……おきてる」  ゆっくりと起き上がった彼を支えた佑里斗は、ボサッとした琉生の髪を整えてあげる。 「どうしたの?」 「……ちょっと疲れた」 「お疲れ様。どこか出掛けてたの?」 「いや、母さんと電話してただけ」 「……それで疲れちゃった?」  頷いたあと、グリグリと頭を寄せてくる彼は珍しく甘えてくれているようで、佑里斗はクフクフ笑って抱きしめてあげた。 「大丈夫?」 「うん」  顔を上げた琉生はジッと佑里斗の顔を見ると触れるだけのキスをした。  佑里斗は少しドキッとして、彼の唇を舐めて舌を絡めていく。 「ん、佑里斗、そういえば」 「何?」  唇が離れると彼は思い出したかのようにそう言った。 「面接どうだった」 「あ、受かったよ。明後日から働く」 「……早くね?」 「少しでも多くお金稼ぎたいから」  まあお金を稼いだから何をするという訳でもないけれど、無いよりも有る方が安心だからという理由である。

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