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第113話
玄関のドアが閉まる音がして、ふと目を覚ました。
琉生が帰ってきたのだ。疲れているようで引きずったような足音が聞こえてくる。
佑里斗はノソノソ起き上がると、ドアを開けて電気の点いたリビングに顔を出した。
「琉生……? おかえり」
「ぁ、ただいま。ごめん。起こした?」
「ううん。……あれ、何その服」
「ただの制服」
見たことの無い黒のキチッとしたスーツを着る彼にときめいて、思わず彼の傍により周りをぐるっと回る。
「かっこいいね」
「そうかぁ?」
「うん。似合ってる!」
「ありがと」
ふわふわ欠伸をこぼした彼は、「シャワー浴びてくる」と言いながら制服のジャケットをソファーの背もたれにポイッと投げると、そのまま浴室に消える。
佑里斗は彼が戻ってくるのを待つことにして、ソファーに座りテレビをつけた。
ふと目に入ったジャケット。
自分より大きな服のサイズに佑里斗は興味を持って、ついつい手に取りそれを羽織ってみる。
「わ、大きい……」
袖が余って掌を隠している。
おそらく今の自分は服に着られている状態で不格好だけれど、さっきこれを着ていた琉生は格好良かった。
ほんのり琉生の香りがする。
クンクンと匂いを嗅けば発情期が近いからがお腹の中がキュンと切なくなった気がして、慌てて服を脱ぎハンガーに掛けた。
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