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第114話
浴室から戻ってきた琉生は、ハンガーに掛けられたジャケットを見てすぐ、「ありがとう」と佑里斗に声をかけた。
少しドキッとしながら「ううん」と返事をする。
「寝ないのか?」
「あ、いや……」
「?」
髪が濡れたままの彼はまだ寝るつもりは無い様子。
ジッ……と琉生を見つめた佑里斗は、彼が首を傾げたのも気にせず黙ってドライヤーを持ってきた。
「座って。髪乾かすから」
「え、いや、寝なくていいのか?」
「一緒に寝たくなった」
「……」
琉生は内心『なにそれ可愛い』と思いながら、言われた通りに椅子に座り髪を乾かしてもらう。
疲れていたけれど既に癒された。
もしかすると最近はずっと一緒に寝ていたので、一人で眠るのは寂しかったのかも、なんて考えて、緩く口角が上がる。
「大きいベッド買うかぁ」
「え?」
「別々でベッドあるけど、一緒に寝るなら大きいの一つある方がいいかなって」
そっちの方が疲れが取れるだろう。
まあ少し狭いベッドでギュッと抱き合うように眠るのも好きなのだけれど。
「どこに置くの?」
「えーっと……俺の部屋か佑里斗の部屋か」
「どっちかのベッドを処分して、大きいのにするってこと?」
「うん」
髪が乾いたようでドライヤーのスイッチが切られる。
琉生は振り返って「良くない?」と問いかけた。
「大きいベッドになってもくっついて寝ていいなら……」
「……可愛い」
心の言葉が口に出てしまっていた。
琉生はハッとして口を抑えたのだけれど時すでに遅し。
「可愛い……? えっと、それでも嫌じゃないなら、良いと思う」
「あ、うん。嫌じゃないよ」
けれど佑里斗はあまり気にしておらず、結局新しいベッドは買うことにした。
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