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第116話
結局翌朝まで発情期がこなかったので、佑里斗は緊張しながら準備をしてバイトに初出勤した。
琉生が送ってあげると言ってくれたのだけれど、『大丈夫です、行ってきます』と一人で家を出たのがついさっき。
バイト先について支給された簡単に説明を受けたあとは早速作業を開始することになった。
初出勤ということで今日は三時間だけなのだが、これが異様に長く感じる。
「ふぅ……」
発情期前のせいか少し体が重怠くて、ついつい溜息を吐いてしまった。
三時間だけ頑張って家に帰れば彼がいる。
そう考えるとやる気が出てきて、佑里斗は一人黙々と手を動かした。
■
一日目を終えた佑里斗は、段々と熱っぽくなってきた体にムチを打って家に辿り着いた。
玄関でしゃがんで靴を脱ぐ。そこから立ち上がろうとするのだけれど体が重たくて動きたくない。
「佑里斗? おかえり」
「ただいま……」
「……もしかして発情期? ちょっとだけ香りがする」
彼の言葉に『やっぱり』と思い、コクリ頷いた。
「動くのしんどくて、もうちょっとしたらリビング行くね」
「いや、そこじゃなくてせめてソファーに行こう。俺が運ぶから」
「えぇ……いいよ」
「俺が良くないから運ぶ」
琉生はそう言うとヒョイっと軽々しく佑里斗を抱き上げ、リビングに移動しソファーに座らせる。
「ありがとう」
「うん」
彼が隣に腰を下ろす。
ちらりと顔を見ればその表情から心配してくれているのが分かり、背中を優しく撫でられる。
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