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第118話
さて、本格的に発情期が始まる前に終わらせておきたいことがある。
佑里斗は急いでシフトを確認すると、クビになっても仕方がないなと思いながら三日後は出勤できそうに無いと伝えた。
けれどまあ夏休みであるからバイトの人も多いらしく、怒られることも無くすんなりと休むことが出来てホッとする。
けれど問題だったのは琉生の方だ。
バイトが明日に入っていたようで、お母さんに電話して行けそうにないことを話せば、怒っているお母さんの声が少し離れた場所でも聞こえてきた。
自分のせいで申し訳なくて、佑里斗は今回は薬を飲んだ方がいいのかと内心とても悩んでいる。
「うん。どうしても難しくて」
困っている彼と目が合う。
発情期のことについてだろう『言ってもいい?』と口パクで伝えてきた彼。
正直どんな反応をされるのかが怖くて、できることなら言わないでほしかったけれど、自分のことばかり優先するのは違うと思い、静かに頷いた。
「実は──」
琉生が説明をする。
お母さんの声は聞こえなくなって、彼が話し終えて少しすると通話を終えた。
「……お母さん、何て……?」
「それなら仕方ないって。俺の代わりは何とかなるって言ってくれたし」
「あ……あの、今度謝りに行くね」
「俺が行くから大丈夫」
「……ごめんね」
琉生だけじゃなくて、彼のお母さんにも、そして彼と働いている人にも迷惑を掛けてしまった。
発情期前なこともあってドンヨリと沈んでいく心。それに比例して表情も暗くなっていたようで、琉生は困ったように「大丈夫だから」と言って小さく微笑んでくれた。
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