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第127話
佑里斗は苦笑を零す。
そもそも一緒に暮らすとなった時に挨拶はしておくべきだった。
こうして琉生の母親から『会いたい』と言われるまで、行動をしていなかったことは非常にまずい。
「怒ってるよね。自分から挨拶にも行かなくて」
「それに関しては体調が優れないからって伝えてたし、最近ようやくマシになってきたって話したから大丈夫」
「それでも、いつの間にか恋人になって番になってたら……お母さん怒るより呆れてるんじゃないかな」
どこからどうやって謝ろう。
これは単純に『会いたいと言ってくれたから会おう』ではなくて、きっちりとケジメをつけなければならない事だ。
「楽しそうに話してたけど」
「……楽しそう?」
「うん。『恋人』とか『番』とか、今までそういうの言ったこと無かったから。帰る直前まで初めて会った時のことから今までの出来事を根掘り葉掘り聞かれた」
「ぁ……それで疲れてる……?」
「うん。本当なら二時間早く帰れる筈だった」
ぐてっと凭れてきた琉生を抱きとめて、ヨシヨシと頭を撫でる。
「俺の母さんに会ってくれる?」
「あ……それはもちろん、会いたいって言ってくださって嬉しいし」
まずは謝って、それから……
「そういえば、お父さんは?」
「さあ? 俺の小さい頃に離婚してるから」
「あ……」
「悲しいとかないから気にしなくていい。まじでぼんやりとしか顔も覚えてないし」
「そっか」
佑里斗自身も両親の顔なんて全く浮かばないので、淡々と返事をすると、いつ会いに行けるだろうかとシフト表を出した。
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