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第129話
風呂から上がった琉生は、そのまま寝る準備をすると佑里斗の待つ寝室に静かに入る。
スースーと聞こえてくる小さな寝息を愛おしく感じながら隣に寝転び、ズリズリと近付いて起こさないように抱きしめる。
「……はぁ」
密かに番の匂いを嗅けばリラックスできて体から無駄な力が抜けていく。
今日はとにかく佑里斗とのことを根掘り葉掘り聞かれた日だったので疲れてしまった。
まあ話していなかった自分が悪いのはわかっているので、母親に文句なんて言える立場では無いと、聞かれたことは全て素直に話したのだが。
不安そうだったな、と寝顔を見ながら帰ってきてすぐ話をした時の佑里斗の表情を思い出す。
母親は全く怒っていなかったし、どちらかと言うと興味津々といった様子だったのだけれど、やはり初めて恋人の親に会うとなると緊張するものだよなと、形のいい頭をヨシヨシ撫でた。
「……ん、琉生……?」
「あ、ごめん、起こした」
「ん……何……? 何かあった……?」
薄く目を開いた佑里斗が琉生を見上げる。
琉生は「何でもない、ごめん」と謝ると、ぼんやりとしている佑里斗は、ゆっくりと瞬きをして緩く微笑んだ。
「もしかして、眠れないの……?」
「ううん」
「仕方ないなぁ……」
「え、寝れるよ……? ぁ? 佑里斗さん?」
寝ぼけているのか話を聞かない佑里斗は、琉生の頭を抱えるようにして抱きしめる。そして戸惑う琉生を置いてけぼりに、優しく頭を撫でたり、時折チュッとキスをしたりした。
「おやすみ」
「……おやすみ」
「スー……」
「……え、このまま寝んの?」
頭を抱えられたまま、『おやすみ』を言ってすぐに眠りに落ちた佑里斗に、琉生は『まじ?』と思いながら、けれど琉生も疲れていたので、まあいいかと彼の背中に手を回し目を閉じた。
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