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第131話

 髪を整える佑里斗の後ろで歯磨きをしている琉生。お腹をポリポリ掻いてまだ眠そうにしている。  朝の支度を終えた二人は朝食を食べ、佑里斗が家を出ようとすると琉生は車の鍵を持って玄関に向かった。 「琉生もどこか行くの?」 「送ってく」 「え!」  驚いて大きな声を出してしまった。  そんな佑里斗を振り返った琉生は「ヤダ?」と聞いてくるのだけれど、まさかそんな事はなくて。 「ううん。嬉しいし、有難いけど……疲れてるでしょ? ゆっくり過ごしている方がいいんじゃない?」 「一緒にいる方が楽しい」 「……そう? じゃあ甘えちゃおうかな」 「おう。甘えろ」  結局二人で家を出ることになり、バイト先に着いた佑里斗は「終わったら連絡するね」と言って車を降りる。  バイトが終われば琉生とお出かけ。つまりデートである。  夜ご飯は勝手に外食する気分で、ほんのちょっとで構わないから特別な日にしたい。  バイト中も何を食べようかなとデートのことを考えながら、手を動かした。 ■  バイトが終わり琉生に連絡をした佑里斗は、洋食が食べたくて、彼が来るのを待っている間にご飯屋さんを調べた。  オムライスやハンバーグにパスタが食べたい。  洋食屋によくあるお子様プレートが大人用で提供されたらいいのに。 「あ、」  見慣れた車がやって来て、手をブンブン振る。  目の前で車が停り、それに乗り込むと琉生が「お疲れ」と佑里斗の頭を優しく撫でた。

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