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第16話

「いてぇっ!」 「頭っ!」 「てめえっ、何しやがるっ」 大男が右手を押さえて一歩下がり、手下らしき男達が口々に叫ぶ。 俺は刀の柄を両手で持ち直すと、男達に向かって突進した。 斧や刀を手に斬りかかってくる男達の手や足を、次々に切り裂いて通り抜ける。 刀を力強く振って付着した血を払い飛ばすと、俺はりつに駆け寄った。 「りつ!大丈夫か?怪我はっ?」 「ゆきはるっ…、こわっ、怖かったよぅ…っ。僕を掴もうとした手を噛んだらっ、お腹殴られたのっ。いっ、痛かったけど、泣かなかったよっ」 「そうか、偉いぞ。後で手当してやるからな。そのおまえの腹を殴ったという奴は誰だ?俺が仕返しを…」 「俺だよ」 背後からいきなり声が聞こえて、素早く振り返る。 俺が刀を振り上げるよりも早く刀が打ち下ろされ、俺の左肩を斬り裂いた。 「ぐっ!」 「ゆきはるっ!」 刀が引かれると同時に、血飛沫が舞い上がる。 一瞬にして目が霞んで目眩を起こし、身体が大きく揺れる。 ーーダメだ!俺が倒れたら、誰がりつを守る? 俺は、ぐっ!と歯を食いしばると、刀で身体を支えて堪えた。 「おいおい、無茶はしねぇ方がいいぞ。今死なれると面白くねぇからなぁ。俺らが楽しむ間は、生きてちゃんと見てろよ?」 下卑た笑みを浮かべて見下ろしてくる大男を、俺は霞む視界で(にら)みつけた。 「ははっ、その目いいねぇ!いつまでそんな態度でいられるかねぇ」 大男に肩を押され、簡単に仰向けに倒れる。 足の上にどっかりと乗られて、身動きができなくなる。 「なっ、何をする…っ。どけっ!」 「おおっと!暴れると余計に血が流れるぞ。今から楽しいことするんだからよ、大人しく見てろ」 「はっ?」 大男が、大きな手で俺の顔を掴み、横に向けさせた。 俺の視線の先に、四人の男に囲まれたりつがいる。 「なにをする…」 「気持ちいいこと」 大男が臭い息を吐きながらそう言うと、身体を(かが)めて俺の頬を舐めた。その余りにもの気持ち悪さに、一気に全身の肌が粟立つ。 「くそっ!やめっ…ろ…」 「おまえ、綺麗な肌してんなぁ。俺はガキよりおまえの方がいいわ」 大男が、再び俺の頬を舐める。 吐きそうな程気持ち悪くて跳ね除けたいのに、斬られた肩が痛くて、大男の身体が重くて、逃れられない。 「おいっ、おまえらも早くやっちまえよ。ただ四人も相手したら、そのガキ壊れちまうかもしれねぇから、手加減しろよ」 俺に斬られた腕や足を押さえていた男達が、りつの傍にしゃがみ込んで手を伸ばし、着物を脱がせ始める。 「うわ、こいつ、肌がすべすべだ」 「美味そうだな」 「俺っ、先がいいっ」 男共の聞くに耐え難い言葉に、俺の身体がぶるぶると大きく震える。 ーー結局俺は、りつを守れないのか。或いは、男達の興味を俺に向けて、りつだけでも何とか逃げてくれないだろうか。 そう願ってりつの様子を伺うと、りつは身体を小さく丸めて、涙を流して震えていた。

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