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第6話 短編
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「あ……」
エレベーターに乗った途端、男は背後で腰をすり寄せてきた。硬い物を無遠慮に押しつけてくる。薄い生地を通して熱を持っていることすら感じられた。
足を前に踏み出し、離れようとした。でも後ろから腰をガシッと掴まれ身動きが取れない。俺の動きすらプレイの一端だと思ったのか、ますますゴリゴリと押し付けてくる。
興奮している。
俺が一夜の相手を探しているただのゲイだと思い込んでいるようだ。仕事がやりやすいのはいいことだけど、違う意味で身の危険を感じる。ホテルの部屋に入るなり襲いかかられたら厄介だ。
ポーンと上品な音が鳴り、ドアが開いた。男はおとなしく腰から手を離し、今度は腰に手を添え俺をレディファーストよろしく通路へいざなう。
地上三十四階、夜景はきっと素晴らしいに違いない。
男がカードキーでドアをあける。中へ入ると、センサーで明かりが灯った。案の定、男はドアを閉めた途端、もう我慢できないと言わんばかりに俺をドアへ押し付け、大きな体で押さえ込んだ。
「あ、ちょっとまっ……」
開いた唇はすぐに塞がれ、大きくて無骨な手が敏感な部分を撫でてくる。
気が早いよ。せめてシャワーくらい使わせてくれよ!
俺の焦りなど知る由もない男は、ハーフパンツの上から俺のモノをやわやわと揉み、反対の手で器用にシャツのボタンを外していく。
このままじゃ全裸にされちゃうよ。
俺はキスに応えながら、男のベルトを外した。外しながら、持っていた小さな発信機をどこにつけようかと悩む。本当は目視しでベルトか革靴に装着したいところだ。
男の手がとうとうハーフパンツをズリ下げ、じかに俺のを触ってきた。震える腰。
「んんっ……あ、待って……僕、汗かいたし……恥ずかしいよ……」
「汗なんて気にしないから大丈夫だよ」
はぁはぁと興奮した吐息混じりに耳元で囁いてくる。
大丈夫じゃないよ! ちょっとくらい待ってよ!
どうやら男は、汗の匂いに興奮するタイプらしい。しかも、恥ずかしがると余計に喜んでしまうようだ。
そんなデータ聞いてないしっ!
あんまり拒否すると不審がられてしまう。ありがたいことに、俺のモノは男の愛撫に徐々に立ち上がりつつあった。まったく反応なしじゃそれこそ怪しまれる。
「ん、もう、時間はたっぷりあるんだし……ねぇ?」
なんとか男の愛撫を止めようと話しかけるのだが、無駄だった。男は膝を突き、とうとう俺のをパクッと咥えた。分厚くて、生暖かい舌が俺のに巻きつき、ジュボジュボと勢いよく顔を前後させる。
「や、あ、だめ」
やばい。気持ちいい。相手がターゲットなのを忘れ、快感に浸りたくなってくる。俺は男の耳を撫でながら、男の靴を見た。膝を突いた時に脱げたのか、片方が絨毯に転がっている。
アレに手が届けば……。
絨毯に膝まづき、夢中でモノを咥えている男は、明日から始まる重要なサミットの警視庁警備部警護課のトップだった。俗に言う「SP」ちなみに「SP」とは「セキュリティポリス」の略だ。そこのトップ、……要は現場で指揮を取る人間の上司だ。だから、こんな部屋を用意するのもお手の物なんだろう。
会場の下見、最後のセキュリティチェックを済ませ、明日は東京からやってくる要人らを出迎える役。現場経験のないキャリアとは違い、それなりに場数を踏んでいる男を油断させなきゃいけない。となるとこれしかなかった。
「あ、まって……」
男はしゃぶりながら、チューブを取り出した。潤滑クリームだろう。「やめて」と言えないうちに、尻に回った手が容赦なく指を潜り込ませてくる。その指はクルクルと回転しながら、中へ奥へと埋め込まれた。異物にビクビクと震える身体。男の愛撫は手馴れたものだった。男同士の経験も豊富なんだろう。何人の部下がこの男の餌食になったのか想像するだけでげんなりしたが、俺の体は意に反してどんどん高められてしまう。
も、こうなったら一回しとくか。というか、それしか方法がない。殴って気絶なんてこの体格差じゃ無理だし、そもそも警戒させたら終わりなんだから。
「ああ、や、あ、そこ」
「ここがいいのか?」
「はぁ、もう、指やあ。欲しい……」
媚びた声を出せば、男は嬉しそうに顔を上げた。ぐったりしている俺を見上げ、立ち上がるとイソイソとスーツを脱ぎ始める。全裸になった男は俺をフカフカの絨毯に転がし、ひっくり返すとワンワンスタイルにさせた。
「ちょっと触っただけでトロトロじゃないか。淫乱め」
「そんなこと言わないで」
男のガチガチに高ぶったモノが体内に捩じ込まれ、悲鳴を押し殺した。絨毯に転がった靴をすがるように掴むと胸に抱える。
「俺の靴なんて抱えて可愛いやつめ」
成功。男はまんまと従順な行為と思い込む。
「あっ、あっ、あっ」
「声出すなよ。ドアはすぐそこだ。外に漏れるぞ?」
「だって……あ、ああっ」
喘ぎながら、靴のつま先部分を指先で確かめて、徐々に靴の土踏まず部分へと下ろす。
どこだ。ここならいいだろうか。
革の部分と、ゴムの接着部分へグイと発信機を押し込む。
「あ、あああっ!」
うまく全部を潜り込ませたか確認するために、顔を上げて抱え込んだ靴を目視した。よし、OKだ。
「いいぞ。いいぞ」
「や、激しいっ……壊れちゃうよぉ」
「こんなに立たせてか」
男に前をキュッと握られる。ホッとしたからか、余計に反応してしまう身体。敏感な部分に押し当て、こすられ、限界へと押し上げられる。
「だ、だめ、イっちゃう」
「出すぞぉ~。中で出すぞぉ~」
「や、中、やだ」
こいつ、SPのクセに病気の心配とかしないのか? なんて思いつつ、必死で腰をよじる。もちろん俺は病気持ちではない。しかし、中出しは嫌なんだって、あとでお腹が痛くなるから。なのに、男の力は強くて逃げられない。
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