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第27話 もうひとりの結城真人 3

 翌日の日曜日、約束通り結城がやってきた。市五郎は昨日の昼間見かけた、結城にそっくりな男の話をしたくて内心ウズウズしていた。  だが待てよと思いとどまる。  結城はイラストのモデルが自分だということに戸惑っていた。他の誰かではないかと、市五郎が最初に見かけた『結城だと思い込んだ男』を、本当は好きなのではないかと。  あれは不安だったのだと思う。自分が求められているわけではないという不安。市五郎の言葉を信じられない不安。  言えるわけがないと市五郎は思った。  今、こんなに穏やかに、自分のそばで微笑んでくれる。最初の頃のオドオドした様子もなくなり、恥ずかしがりながら甘えてくれるようにもなったのだ。そんな恋人を、また不安にさせたくはない。  幼い頃、生き別れた兄弟なのではないか? と真剣に考えもしたが、それを結城が口にしないのに、自分が口に出すのもおかしいと思った。 「高山さん?」  布団に寝転がり天井を眺めながら、つい考え込んでいた市五郎の顔を、結城が不思議そうな表情で覗き込む。 「……ああ、ごめん」 「散歩とか、気分転換でもしに行きます?」 「転換はしません……せっかくあなたがいるのに」  市五郎がキッパリ返すと、嬉しそうに、少し照れた様子で微笑む。そんな結城の手を引き、体の上へ重なるように乗せると腕の中へ閉じ込めた。結城が市五郎の胸に頬を乗せる。  ひたりと触れる結城の手のひらと頬。重なり合った体。そのスベスベした肌を撫で、手触りを楽しんだ。さきほど市五郎を受け入れた部分を指の腹でそっと撫でる。  そこはしっとり濡れており、刺激にキュッとすぼんだ。 「あ、あの」  おろおろとした声。何度も抱き合っているのに、どうしても恥じらいが抜けないようだ。その声でまた市五郎の局部が熱を持ち始める。  市五郎は結城を抱えたままゴロンと体勢を入れ替えた。そして、結城をうつ伏せにし、体重を掛けないように背中に覆い被さる。丸く愛らしい後頭部にキスをした。 「溶けてますから、大丈夫ですよね?」  結城の真っ赤に熟れた耳を甘噛みしながら囁けば、首をすくめそっと振り返り情けない顔で市五郎を見る。 「大丈夫って?」  あどけないと表現してもいいような無垢な声。その声が、変わる瞬間が堪らなく好きなのだ。  市五郎はピッタリと閉じた足の間の、その奥へゆっくりと押し込んだ。どれだけ足に力を入れて膝を合わせていようと、そこは無防備に市五郎を受け入れる。 「ん、ふうう……ぅあ」  シーツをギュッと掴み顔を布団に埋め快感を耐えようとする。耳だけじゃなく、首や肩まで真っ赤になっているのが堪らない。恥ずかしい体勢だと思っているのか、全身に力が入っている。 「トロトロに解けているのに、そんな締め付けたら……すぐに昇天しますよ?」  耳元でからかうように囁きながら手を滑り込ませ、胸の突起をキュッと摘んだ。フルフルと首を振る。そんな可愛らしい仕草をされては、限界まで苛めたくなるばかりだ。  ゆっくり、ゆっくりと、出し入れしながら、弱い部分を擦り上げる。その度に結城の口から「ぁあっ」と弱々しい鳴き声が零れ落ちる。  愛おしい。奥を犯しながら、どこもかしこも噛みちぎりたくなる。  市五郎は色付いたままの肩に口づけ囁いた。 「あなたが好きです」  市五郎の言葉にコクコクと頷く結城の息が上がっていく。  「はぁ、はぁ、っうう、この体勢……苦しいです」   結城が許しを請うような表情で振り返り訴える。背筋に悪寒が走るくらい、その表情は淫靡だった。 「苦しいのが好きですか?」 「ん、はぅ……ぁっ! んうっ」  市五郎の言葉にキュウッと秘部が締まる。  結城は握りこぶしを作り、首を横に振った。真っ赤に染まる肌。耐える横顔が情欲を煽る。目尻に浮かぶ雫も、その炎を鎮火することはできない。むしろ燃料になっていた。  膨れた自身のモノが押しつぶされて苦しいと言えないのか? それとも、気持ち良すぎて苦しいのだろうか。  欲望に飲み込まれた市五郎はぼんやり考えながら囁いた。 「でも、ここはこんなに濡れていますよ?」  結城の腰を少し持ち上げ、隙間から手を差し込み、立ち上がるモノを優しく握った。 「やっ、ああっ!」  結城が掴んだシーツを引き寄せ顔を埋める。ぴくぴくと腰を震わせ、体をくねらせ逃げようとする。 「逃がしませんよ……」  覆い被さり繋がったまま耳元で囁く。  痺れるような快感に市五郎の脳は沸騰し続けた。 「あなたは、私のものです」  手繰り寄せたシーツからチラリと顔を横へ向け、結城が涙目で市五郎を見上げる。手の中のモノも先端から蜜を溢れさせ熱を増していく。艶やかな表情。声無く乱れる息。それと比例して市五郎を包み込む結城の体はどんどん柔らかくなっていく。  うしろの刺激にビクビクと震えるうなじや肩に吸い付いた。キュッと強く吸って唇を外せば、そこは鬱血して濃い紅色がつく。己の印に市五郎は満足を覚えた。

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