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第46話 昏い秘密 2
上体を傾け、結城の唇を塞ぐ。甘いキスを交わしながら、結城の手を取り己の昂ぶりへ押し当てた。薄い浴衣の布越しでは、放つ熱さえ結城へ伝えてしまうだろう。
キスで瞑っていた結城の瞼に力が入り、とろけた表情に赤みがさす。結城の手のひらはおずおずと、しかし意思を持って昂ぶりに沿うように動いた。
結城をそっと布団へ押し倒し、邪魔な布を剥ぐ。全裸の結城に覆いかぶさり、長く熱い口づけを重ねた。結城は容易たやすく手中に落ちてしまう。そのはかなさに興奮する。
市五郎を求めてくる舌。舌と舌を擦り合わせ、結城の理性が完全に溶けるまで刺激し続ける。キスの合間に「ふーふー」と呼吸し、持ち上げられた瞼から覗くキラキラと光る目は既に熱に浮かされていた。
柔らかな頬を撫で、耳をくすぐり、首筋を何度も優しく撫でる。その度に結城は気持ちよさそうに目を細める。
ゆっくり結城の中に高ぶったモノを埋めると、白く華奢な身体はビクビクと震えながらわずかな抵抗のあと市五郎を奥へ導いていく。
「……結城さん、苦しくないですか?」
尋ねると、結城が弱々しく頷き微笑む。
「大丈夫、気持ちいいです」
最初の頃、恥ずかしさに声さえ出せなかった結城が、今はリラックスして素直に気持ちを口にする。市五郎を信頼し、甘えているのが伝わってくる。それが嬉しくて仕方ない。
「私も、とても気持ちいいです」
慎重に全てを埋め込み、結城を抱きしめたままさらに丁重に腰の出し入れを繰り返す。
「……っ、はぁ、んっ!」
敏感な部分に当たる度、キュッと目を瞑り、縋りつくようにしがみついてくる。
「そんなに締めたら、すぐに終わってしまいそうです」
耳元へ囁きながら何度も擦りつける。
「ふっ、う、ん……で、でも、んあっ」
どうしようもないですと泣きそうな顔で訴えかけてくる。その表情が扇情的で、ますます市五郎を燃え上がらせる。結城の片足を左腕で掬い大きく開かせる。普段は一糸の乱れもなくキチンとしている結城の乱れた姿に、体内の血が煮えたぎる。
結城は恥ずかしいのか、逃げるように赤く染めた顔をそむけ、手探りで掴んだ布団を顔のそばへ手繰り寄せようとする。
市五郎はそれを許さず、布団を結城から取り上げると足元へとずらした。
「あ……」
小さな声を漏らし、不安そうにキラキラと潤んだ瞳を向ける。
「全部見せてください」
目を逸らし、叱られるのを健気に耐える子供のような表情を見せる。なのに結城のソコは、市五郎を飲み込みヒクヒクと痙攣しながら奥へと誘うように蠢いているのだ。
たまらない。
大きく開いた場所を眺めながら、結城の締め付けを楽しみながら、市五郎はゆっくり引き出しまた深く押し込んでいく。結城の全部を味わい尽くす。
「は、っん、市五郎さ……」
結城が市五郎に向かって手を伸ばす。素直に頼ろうとしてくる。愛おしさが溢れだす。
市五郎は結城へ覆いかぶさると、唇を塞ぎ、舌を絡めながら弱い部分を擦り続けた。ぬぷぬぷと聞こえるいやらしい音が部屋に木霊する。その音に結城は眉を寄せ強く目を瞑り、恥ずかしそうに頬を染める。それとは裏腹に口内の舌は甘えるようにくっつけてくる。
マナトがどこで何をしようと、結城さんがこんなふうに甘えられるのは……きっと私だけ。
そう思えば思うほど、愛しさがとめどなく込み上げるのだ。
「結城さん、好きです」
「僕も、僕も市五郎さんが、好きです」
深く抉り、打ち込み、弱い部分を何度も擦りながら囁き続ける。与えられる刺激に結城の目尻に涙が浮かぶ。何度も息苦しそうに息継ぎしながら鳴き声を上げる。
私はあなたを守ります。逃げません。あなたの重荷を背負わせてください。
溢れる愛しさと混ざっていく気持ちが結城へ伝わるようにと切に願った。
何度も果て、グッタリと身を投げ出す結城を、さらに許しを請うまで攻め続けた夜中、心身共に困憊こんぱいし、深い眠りについた結城へ市五郎は静かに呼びかけた。
「……マナト君、聞こえますか?」
安らかな表情のまま眠り続ける結城。
催眠療法のように上手くはいかないだろうか。
不安の中、市五郎はじっと息を殺し結城の寝顔を見つめ続けた。再び静かにマナトを呼ぶ。結城の瞼がピクリと動いた。しかし目は開かない。結城はモゾッと動くと寝返りを打ち、市五郎の胸へ猫が甘えるように額を擦り寄せてきた。可愛らしい仕草に愛しさがまた込み上げ、その体をギュッと抱きしめる。
結城を起こさないよう髪をそっと撫でながら、市五郎は囁いた。
「結城さん、そしてマナト君、愛しています。あなたを知りたい。私は絶対、あなた達を裏切らない。だから出てきてください」
届いているのか分からない。でも呼びかけるしかなかった。
異様な家庭環境。子どもの頃、何かに怯え、自分を押し殺し、殻に閉じこもり己を守るしか方法が無かった結城。そして結城を守るために表へ出てきたマナト。二人はひとつであり、また別々の存在なのだと、今の市五郎は受け入れていた。マナトが言っていた通りだと思う。
まるで仲の良い兄弟のよう。兄であるマナトはいつも結城さんを守ってきたのだ。それならば私はマナトに会いたい。会ってマナトを抱きしめてあげたい。
初めて、心からそう思えた。
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