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考える男 2
風呂の中でも考えはなかなかまとまらない。
ユウと一緒に過ごすデメリット。今のところはない。てか妙に楽しい。これはメリットだよね? ただ、妙なソワソワも発生するけど。
大丈夫だよな。ユウは変なことをしない。俺だって、彼女と別れて半年経つし、久しぶりに人が家にいることを楽しんでるだけ。
「は~……あっちぃ~」
長湯してポカポカだ。キッチンへ入り、冷蔵庫を開けてユウに言った。
「ユウ。なんか飲んだ?」
「ううん」
「ビール飲む?」
「いいの? 飲む飲む」
「ごめん。先に言っとけば良かった。冷蔵庫の中、いちいち断らなくてもいいから。飲みたきゃ飲めばいいからね」
「ん~。ありがとー」
ユウの隣に座り、コタツの上へビールを置く。
「ほい」
「ども」
ユウはビールを手に取りプルタブを開けると、俺の缶にコツンと当ててグビグビとビールを煽った。喉仏が上下に動いている。
白いな……。
ハッと我に返り、ビールを飲む。ユウは冷たいビールにプルッと首をすくめたあと、ニコッと笑った。
「やっぱお風呂上がりのビールは冬でも美味しいねぇ。それもこの子のおかげだけど」
ふふふと笑ってまたコタツに頬ずりする。
「暖かい部屋でキンキンに冷えたビール最高だね」
「うんうん、至福」
ナッツを皿に出し、テレビを見ながらビールを飲む。
おかわりを取りにキッチンを往復した。
ユウはだいぶ酔っ払ってきたみたいだった。頬も耳もピンク色になっている。通常でも高めの声が、甘えた猫なで声になってきた。
「んね、ひろくーん」
「んー?」
ユウは俺の肩に肩をゴツンとぶつけ、グッと顔を寄せて言った。
「……ひろくん、俺のこと怖いんでしょ」
「え……別に」
一瞬ギクッとしたけど、顔には出なかったと思う。実際「怖い」と思っているわけじゃないし……。
「ほんとにィ?」
至近距離で首を傾げ覗き込んでくる。とろんとアルコールで潤んだ目が可愛いし、こんな近くだっていうのに肌はツルツルだし……。
むさくるしい男だったら、とっくにグーパンチしているくらいの距離にいるユウをマジマジと見つめる。
「ほんとだよ……」
ユウはゆっくり目を閉じて、また開くと「ふ~ん」と言ってコタツに両腕を乗せた。なんのツッコミもない。
「怖いっていうより興味がある。自分の気持ちに。ユウが可愛いから」
言うつもりの無かった言葉が勝手に出る。
「そ? ありがとお」
ユウはムニッと口角を上げた。
褒められて物怖じしないユウ。可愛いという単語はきっと、元彼から散々言われ聞き慣れているのだろう。いや、代々の元彼か? 照れる素振りは一ミリもない。
「普通に可愛いと思う。変な意味じゃなくてね? 一緒にいて気疲れすることもないし……。むしろ、いい感じに俺は楽しい。年末年始、一人で過ごすのは寂しいかなって、考えてたしね?」
「それは良かった。改めてよろしく」
缶をコツンとぶつけてくる。
「俺はノーマルだし……でも、ユウは可愛いと思うし、そういう自分の心の動きに興味はある。ノーマルって思い込んでただけで、もしかして違うのか? とか、単純に世話好きなだけなのかもしれないけど……あはっ。なんかよくわかんねーや」
「ノーマル……」
ユウは落ち着いたトーンで呟いた。
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