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キスとゴム 4
「あははは。大丈夫。これくらい。車で行ったしね」
俺は笑って階段を上るとキッチンへ向かった。ビールだけで冷蔵庫をほほ占領してしまいそうな勢いだ。
「わー! すっごい! 本当に買ってきてくれたんだ」
ユウは歓声を上げ、袋から次々にポッキーの箱を出していく。さっそく一個開けてポッキーを取り出しパクリ。ポキポキとこ気味いい音を立てながらもぐもぐ食べて、指のポッキーが無くなったらもう一本取り出す。
ぷぷ。リスみたいだな。
「いっぱいあるからポッキーパーティーもできるね!」
「鍋&ポッキー? チーズ鱈やナッツの横に並べたらいいかも。それより、アイスしまわないと溶けちゃうぞ」
「あ、そうだね!」
ユウは手に持っているポッキーを口に咥えたまま冷凍庫を開けてアイスをしまった。
屈んだユウからふんわりといい匂いがした。改めてユウを見る。そういえば大爆発していた髪が綺麗に降りてる。ユウの腰に手を回し引き寄せた。
「ん?」
「あーん」
ユウの咥えていたポッキーを反対側から齧る。目を伏せ、互いの顔の間にあるポッキーを見つめながらちょっとずつポッキーを齧った。
俺は齧るのを止め、ポッキーの端っこを咥えたままユウの唇が到達するのを待った。八センチ、五センチと縮まって鼻先が当たりそうになるところで、携帯の着信音。多分、楠木だ。
俺は残りのポッキーを口に引き込むと、ユウの唇にチュッとキスして携帯をポケットから取り出した。
「もしもーし」
『俺ぇ。いーま電車に乗った~。って言っても実家でたところ。多分五時くらいになると思うから、また連絡するよ』
「おう。気をつけて」
『じゃねぇ』
人の良さそうな笑顔が想像できる嬉しそうな声。
よっぽど実家が退屈だったんだろう。
通話が途切れるなり、ユウが触れるだけのキスをしてきた。まるで会話が終わるのを待ち構えていたみたい。積極的でくすぐったい。
携帯をポケットへ滑り落とすと、啄ばんでくるユウの唇をもっと味わうべく腰を引き寄せ、ユウが逃げないよう、もう片方の手でうなじを包んだ。
甘い甘い、チョコ味のキス。
そしてまたキッチンっていう……。
ユウはエロいのだと思う。なにもしてなくても、ただ立ってるだけで。
本人は意識してなくても、人を惹きつけるものを放出し続けてる。そんなユウがシャワーを浴びて、いい匂いをさせている。
誘われている気がした。
こんな場所でも。いや、こんな場所だからこそ?
ユウのたかぶりを腿のところに感じた。俺もそうなってる。ゴムも買ってきた。楠木がくるまでにあと三時間弱ある……昼間だけど、シていいかな。
グルグル考えてると、今度はメールの着信音。
あとでいい。ユウの髪をまさぐり、腰を引き寄せていた右手でキスしながら耳をくすぐる。ユウが重なる唇のすきまから深く息を付いた。
ユウは背中に回した手をしがみつくようにずらし肩を掴むと、反対の手で俺の股間を撫でてきた。
「っ……」
明らかにユウの方が慣れているわけで、ここはユウのリードに任せていいのだろうか? でもビビってなにできませんって、わけじゃない。
俺はユウの手に力を抜きつつ、耳をくすぐっていた手をパーカーの背中に入れた。しっとり吸い付くような肌。指の腹で背中をソフトタッチで撫でる。触れるか触れないかのギリギリのタッチで背骨のラインを上下に撫でながら、ユウの舌をきつく吸い、唾液を啜った。
「ン……」
ユウが鼻にかかった艶っぽい声を漏らす。俺も余裕は無かった。
ユウが撫でていた指先が形をなしている物を包みこみ握る。スウェットの上からゆっくり上下にスライドしてくる。手の動きがエッチだよ。
またメールの着信音。
ごめん、楠木。あとで返すから。
気持ちが急いでる。込み上げてくる欲望を空気と一緒に吸い込んだ。
左手でユウのパーカーをたくし上げ、両手でめくり上げる。
「……手上げて」
素直に俺の股間から手が離れ、バンザイする。パーカーを脱がすと、ほっそりした首と鎖骨が浮き上がる頼りない半裸が現れた。
白い。想像したよりその肌は白くて艶かしくて、思ったよりもっと俺を興奮させた。
「ベッド行こうか?」
「大丈夫。エアコン入ってるし。ここでもいいよ」
ここでいいなんて。なんてエッチなんだろ。
生唾を飲み、ユウの体を両手でそっと撫で回した。柔らかくて吸い付くような肌だ。気持ちいい。いつまでも触っていたい。
「ふぁ……ヒロ君えっちぃよ」
「ユウの体がエッチなんだよ。なんでこんな……すべすべモチモチなの?」
「筋肉を付ける努力したことないからね。……俺の体、好き?」
その質問も酷く扇情的だった。俺は、答えられず首を傾け、ツンと尖った胸の突起を舐めた。ユウの肩が内側に入る。刺激から逃げようとする仕草。
敏感なんだね。
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