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キスとゴム 5
「ますますエッチだね」
「ヒロ君こそ」
「……ユウ……」
想いを告げようとした時だった。携帯の着信音。メールじゃない。電話の方だった。メールの返事がないから、痺れを切らしたのか、六回鳴って留守電に切り替わったのに、また鳴り出す携帯。
「……ふーっ……。ごめん。楠木だ……」
ユウは調理台にぴょんと腰を乗せ、俺の後頭部を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。頬に当たる素肌。ユウの温もり。
「出てもいいよ」
俺の頭に頬を乗せて言った。
この体勢で話せと? なんてエッチな電話だ。
通話ボタンをタップして携帯を耳に当てる。
「もしも……」
『あーーー! やっと出たよ~~~! もおお~! なんだよぉぉ~!』
電話の向こうで声がした途端、ユウが頬をスリスリと頭に擦りつけてくる。
「あは。ごめん、その、ちょっと、部屋を掃除とか、ビール買いに行ったりバタバタしてたんだよ」
『あ……そっか。ごめん。なんかさ、人身事故が起きたらしくてさ、今、電車ストップしてるの!』
「うわ、マジかよ。飛び込み?」
俺は話しながら目の先にある突起を指先でスイッチみたいにポチッと押した。俺の頭を抱え込んでいる腕がピクンと強ばる。
『んー。いや、そうじゃないみたいだけど、接触事故? でも、安全確認の為にどうこうってアナウンスが流れて、もうかれこれ三十分くらい止まってたんだよお~』
ユウの敏感な反応が面白くて、次は舌を伸ばし、舌先を尖らせてツンツンと突起を啄いてみた。ユウが俺の頭を固定するように、キュウッと腕を巻きつける。
舌は届かなくても手が自由なんだよね。
また指の腹でツンと尖った突起をそっと撫でる。クルクルと優しく円を描くように撫で続けた。ユウが息を殺し、ふるふると耐えているのが分かる。
エッチだ。ものすごくエッチ。
「そうなんだ。肉は大丈夫?」
『肉は保冷剤と一緒に包んであるから』
ユウの腕が緩んだ。だから、また顔を寄せて突起をレロレロと舐める。ユウの心音が早くなっているのがわかった。トクトクとダイレクトに伝わってくる。嬉しい。もっと感じて欲しくて、舐めながら、空いている手でユウのふとももをそっと撫でた。
「そっか。じゃあ安心だ」
『でも運転再開の目処 が立ちませんって言われたら~?』
ユウがもっと甘えるように、俺の髪に顔を埋める。
全身性感帯なのかも。こんなエッチだし。
ふとももを撫でていた手を、足の付け根の方へ伸ばす。ユウは太ももを撫でる手を握り、俺の体をギュウウと足で挟んだ。
これ以上触っちゃダメ? そんな風にされると余計に弄りたくなるよね。
ユウが抑えるのも構わず、胸の突起を舐めながら、下腹を撫でた。ピクンと震え縮まっていく体。
「まぁ、はわ……慌てても仕方ない、動いたらまた教えてよ。別に今日が無理なら、明日でも……」
そう言った途端、楠木の嬉しそうな声が響いた。
『あ! アナウンス流れた! 点検終わったって! 良かった!』
「お、おお。そっか。良かった」
頭に乗っていたユウの左頬が右頬に変わる。おねだりしてるみたい。
『って、言ってもまだ県内だから。わりぃ。一時間くらい遅れると思う。六時か六時半かなぁ』
「了解。丁度いい時間じゃん」
通話を終えて、ギュウウッと締め付けるユウを見上げ、半分笑って言った。
「残念、電車動いたんだって」
「一時間増えたんでしょ?」
「今何時だ? 四時か。うん。二時間ちょいあとって感じらしい……」
「あと二時間も気持ちいいコトできるんだ?」
他人事のように話すユウ。
俺は薄暗くなりつつあるリビングを背にしたユウを見つめた。
気持ちいいのが好きなだけ? 俺は多分、自分で思うよりユウに惹かれているよ。
「ヒロ君に見られてるだけでゾクゾクしちゃう」
話す言葉が全て、人を煽っているようなユウ。その言葉は俺へ向けられているのか、誰にでもそうやって囁いてきたのか。考えると迷路に迷い込んでしまいそうになる。
「……好きだよ」
答えが欲しくて言葉にした声は、情けないけどちょっと震えていた。
俺の頬を華奢な手が包み持ち上げる。
ユウが頭を落とし、キスして囁いた。
「俺も好き」
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