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対決のあと

   込み上げるものを押し殺し、ユウに微笑むと玄関へ向かう。鍵を差し込みドアを開けた。 「おかえり~」  どんな勢いで降りてきたのか、もうユウは目の前に立っていた。我慢できず、俺は靴を履いたままユウをギュッと抱き締めた。 「うわお」  ユウの肩に顔を埋め、滲んできてしまう熱を隠す。 「ヒロ君?」 「ん……。ただいま」  泣いているのを悟られたくなくて、強くユウを抱き締め続けた。 「うん。おかえり」  背中に回される手。寄り添うようにユウの頭がくっつく。  余計に苦しくなる。ユウの肩に顔を擦り付け涙を拭った。  背に回された手がトントンと背中を軽く叩き俺をあやしてくれる。まるでぐずる赤ん坊を寝かしつける母親のようだ。離れがたくて、肩に顔を埋めたまま名前を呼んだ。 「……ユウ……」 「ん?」 「……腹減ってないか?」 「食べに行く?」 「ああ。……車で行こうか? 寒いから、上着持っておいで」  鼻を啜って顔を上げ、笑顔を作る。  ユウはそんな俺を見てムニッと口角を上げ、微笑みながら「うん」と頷いた。 「なにが食べたい? 寿司がいいかな? それとも肉?」  車を走らせながら助手席のユウへ話しかける。 「んじゃ肉で」 「オッケー」  いつもの「なんでもいいよ」じゃなくて、珍しくちゃんとチョイスした。特別、肉好きってわけでもないのに……もしかして俺を元気づけようとしてる?  いろんなトッピングが楽しめるステーキ&ハンバーグの店へ車を走らせた。サラダバーやドリンクバーもあって日曜日ならファミリーでいっぱいの店だ。  食欲なんてまったく無かったけれど、腹を撫でながらメニューを広げる。 「好きなもの頼めよ。俺は和風おろしバーグにしようかな」 「これにしよー。唐揚げ&ハンバーグ」  メニューを指さしハキハキと即答する。 「うんうん。ハンバーグは普通サイズでいいのか?」 「いいよー」 「サラダバーあるから、野菜も食おうな」 「はーい」  素直な返事。  思わずクスッと笑ってユウの顔をジッと見つめる。  ツルツルの肌も、上品な小さな唇も、ふっくらとした頬も、素直な髪も、俺を見つめるまっすぐな瞳も、全部覚えておこう。  出会った頃のユウは掴みどころのない雰囲気だった。  公園での無謀な野宿も、今思えば「なんとかなる」という前向きな発想じゃなかったのだろう。ただ、あの男の前から自分の存在を消してしまいたかった。それだけが公園にいる理由だった。そうだよね? 「今日はなにしてた?」  食事をしながら他愛もない話をする。  いつもはすぐに運ばれてきた料理をガツガツと食べてしまうけど、今日はゆっくり食事をしようと思った。

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