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蒼炎の番

「は?なんつった?」 蒼炎は帰りの車の中で龍臣に電話をかけていた。 「だから、あずさは針葉(しんよう)医院に入院した」 「何?なんか異常あったわけ?」 「無い。子を授かろうと思えばすぐ授かれそうなほどいたって健康体だ」 「じゃあなんで…」 「Ωフェロモンを一時的に制止させるホルモン坐薬を拒否してな。樹からの提案で避難のために入院することにしたんだ。とりあえず不安だろうが、うちの血気盛んなヤツらの餌食になる心配は消えたから安心しろ」 「分かった」 「いずれ、子を授かれば世話になる場所だ。下見ができていいだろう」 「だな。親父さぁ、頼まれごとしてくれねーか?」 「なんだ?」 「あずさに携帯を用意してやってくれるか?俺がそっちに帰ってから…と思っていたけど、たった2泊3日とはいえ入院ともなると連絡の手段が欲しい」 「分かった。頼まれてやる。明日の昼前にはあずさの手元に届くようにする。それでいいな?」 「さんきゅ。親父」 「じゃ、明日の総会も頼むぞ」 「了解」 蒼炎は龍臣との電話を切ると、携帯画面の連絡先一覧をスライドさせ〝青葉(あおば)〝を選択し電話をかけた。 「もしもし」 〝蒼炎さん、どうしたの?龍臣がまた何かやらかしましたか?〝 「何も。青葉、いまはどこを旅している?」 〝いま?近いですよ。隣県の温泉街。行く末楽しみな素敵な若者がいっぱい。何人かが組入りを希望しているから近々、そっちにいくよ。で、何のご用?〝 「あずさ…龍臣の色がな、発情期に入って屋敷から避難させるために針葉医院へ突っ込んだ。で、龍臣からの頼みで携帯電話をひとつ用意してほしい。で、ついでにその色の良し悪しを見てくれるか?」 〝いいよ。名前なんて言った?〝 「あずさだ。ところで青葉、次はいつ帰ってくる?」 〝さあ?もしかして寂しいの?蒼炎さん。45歳にもなって?〝 「言わせるな。妻が放浪中で寂しくないわけないだろう?」 〝僕は自由でいたいんだもん。そういう約束ですよね?お望み通り跡継ぎは産んだんだし好きにさせてよ〝 「40も過ぎて43にもなるし、そろそろ放浪も飽きるかと思っていたが、変わらないな」 〝自由で天真爛漫なところが可愛いって口説いてきたのはだぁれ?蒼炎さんだったと思うなぁ。違う?違わないよね?〝 「だな」 〝とりあえず、明日ね。おやすみなさい、蒼炎さん〝 「医院だけでなく、屋敷にも寄ってくれよ?青葉」 〝気が向いたらね?報告は電話でもできるし〝 「青葉、気が向く向かないじゃなく寄れ。たまには夫婦の時間を過ごしたい」 〝んー…分かった。別にいいけど気持ちよくなかったら…潰すよ?〝 「怖い発言だな…青葉。久しぶりなんだ。うんとよくしてやる。約束だ」 〝はいはい。期待せずに会いに行きます。じゃあね、おやすみなさい。蒼炎さん」 「ああ、おやすみ青葉」 蒼炎は表情を緩めて笑い、電話を切ると自分の番、青葉が映る待ち受け画面を眺め 「自由なやつだ…まったく」 青葉に思いをはせた

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