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ビデオ通話
あずさは青葉から受け取った袋から箱を取り出し中身を見ていた。
「どうやって使うんだろ…設定はしてくれているって言ってたけど…先生、助けて」
「はい、これはこうして…」
樹医師はあずさに電話の使い方を教え、あずさは熱心に話を聞いた。
数分のレクチャーの後、樹医師はあずさにビデオ通話の仕方を教えた
「ここに龍臣さんの番号が入っています。こっちを押すと普通の通話で反対側を押すとビデオ通話になります」
「ビデオ通話?」
「はい、この画面に龍臣さんが映って龍臣さんの方にもあずさくんが映るんですよ」
「すごいー」
「やってみてはどうですか?」
「でも…お仕事中」
「龍臣さんが用意させたんだから問題ありません。出るかは分かりませんがあずさくんから電話が来たら喜びますよ」
「分かった!やってみる」
あずさは言われたとおりに操作して龍臣に電話をかけた。
すると、何回かのコールの後に龍臣が出て
「あっ!先生っ龍臣さんだ!オレの顔も映るんだね?コレって」
「龍臣さんの方に映っている画面がこれですよ」
「そうなんだ。龍臣さんっ」
「あずさ、昨日ぶり。大丈夫か?」
「うん。お友達できたよ」
「友達?よかったな」
「ふたばちゃんっていうΩの男の子でね、赤ちゃん授かろうって頑張ってるんだって」
「そうかそうか。また明日の夜に詳しく聞いてやる」
「うんっ。あ、あの…コレ、電話ありがとう。青葉さんが届けてくれたよ」
「は?青葉って…母さんが?あずさ、母さんに会ったのか?」
「うん。次は婚儀の時に…なんて言ってたけどお屋敷に帰る気ないのかな?」
「あの人は自由人だからな。まあでも、そう言うってことはあずさのこと認めたんだな」
「そう…なのかな?」
「ああ。うちは母さん中心だから母さんがokなら全部okだ。あずさ、明日迎えに行くから待ってろ」
「うん。待ってる。あ、この電話の番号とアドレスをふたばちゃんに教えてもいい?」
「その電話はもうお前のもんだから気にすんな。友達なんだろ?むしろ教えてやれ」
「ありがとう、龍臣さん」
「おう。じゃ。また明日な」
電話を切るとあずさはニマーっとだらしない顔で笑い、樹医師を見上げ
「電話できた!」
「よかったですね?ふたばが起きてこのことを知ったら喜びますよ」
「うん」
あずさははじめての電話端末を両手で持ち、ご満悦の表情を浮かべた。
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