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第26話:魔獣。
その場にいた獣人達の様子に、さっきまでボルテの中に巣くった感情が晴れた気がした。
その様子に、グリズがボルテの肩を叩いた。
「・・・そろそろ、中央もくるはずだ・・。残りを探しに行くぞ。」
「はい!」
しばらくして、第二隊が到着し、隊を引き連れてグリズとボルテは二手に分かれ、山へと入って行く。
微かに臭う、鉄臭い血の臭い。
独特の獣臭。
「隊長!!!向こうの茂みに!!」
「!!」
茂みの奥に見えた2体の魔獣が、グリズの隊目掛け一気に飛びかかった。
騒がしくなった山の気配に、ボルテも気を引き締めた。
「向こうに、魔獣が出たようだ・・・、ルー、レフ、ロウ、お前達はグリズ隊長の方へ応援に行け。残りは、私と共に進むぞ!」
「「はい!!」」
発見された遺体は、昨日ボルテが注意した獣人だった。
宿屋の雪山に埋められていた状態で見つかったその獣人は、よくある酔った時の奇行による事故だと思い、見つけた宿屋の亭主は数人の仲間と一緒に雪山から引き上げようとし、その獣人の下半身が無いことに気がついたのだった。
「・・・ボルテ。近くにまだアイツらがいる可能性が高い。気を引き締めて行くんだぞ。」
「はい。」
「それから、今日の昼は兎まい亭の飯、頼んだからな!」
「えっ?」
「行くぞ!!」
そう二手に分かれ、グリズ隊長の班が向かった方で、仲間達以外の気配と鳴き声が聞こえ、獣性の強い隊のメンバーを応援に向かわせた。
ボルテも周囲を警戒しながら、奥へと進んでいった。
・・・・なんで、グリズ隊長はあの時、昼食の話なんかしたんだろ・・・?
あー、フィーと朝ご飯食べ損ねたんだった・・・。
不意に、今朝の事を思い出しボルテの腹が鳴る。
「副隊長!!!今何か音が!!!」
「えっ・・・あ・・・ゴメん・・・朝食べ損ねたから・・・」
ボルテがそう振り向いた瞬間、視界の端に黒い塊が走り抜けた。
「!!」
見覚えのある黒い塊の姿に、ボルテの尾が膨らむ。
まさか、フィー?!
そう思った瞬間の出来事だった。
「「副隊長!!!!!!!」」
「うわぁっ!!!」
腕に衝撃が走ったのと同時に、飛びかかってきた黒い塊を切り落としていた。
その場に、切り落とされた黒い塊が姿を変えていく。
「・・まさか・・・、幻影魔獣か!? !!」
「ふ、副隊長!!?」
「副隊長!!!!!!」
その場に、ボルテも倒れ込んだ。
倒れ込んだボルテの視界に、自分が切り捨てた魔獣の姿が見えた。
フィーの姿で飛び出してきたと思った魔獣の体から黒い煙が湧き出てくる。
顔も、みるみる変化し、四本の角が額に出始めた。
魔獣と獣人の違いは、この四本の角にもあった。凶暴性を増すごとに、長く太くなる角は、魔獣の証。本能のまま行動する魔獣が、餌を隠す事はノーザでは珍しくなかった。
あ・・・やば。目の前が暗くな・・・る。
「副隊長!!!!!!!!!!」
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