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第28話:中央からの
北の国境警備隊本部
「なんだって!! ボルテが?!」
「ああ。」
「それで・・・、怪我の具合は?」
「出血の割には、傷は浅かったんだが・・・。襲ってきた魔獣が、問題だ・・・。」
「まさか・・・。」
「ああ、そのまさかだ。」
調査を終え、報告に戻ったグリズのもとに、フォックス、シュベールが詰め寄った。
ボルテと二手に分かれたグリズたちを襲った魔獣の中に居た小さな個体が幻影魔獣だった。
幻影魔獣の生態は、未だに謎が多く、魔獣討伐で一番手強い相手だった。
目を合わせた者の深層心理を投影し、自身の姿を変化させる。
それが、幻影魔獣の生きる術らしく、魔獣討伐における鉄則の一つにある、魔獣と目を合わせるな。は、この幻影魔獣が原因ともいわれた。
「ボルテに一撃くらって、魔獣は討伐されたが・・、その時に魔獣の血液に触れたらしい。」
「そうか、ならあとはボルテの気力次第だな。」
「けど、いつ目覚めるかなんて・・・。」
「ああ。それも、ボルテの気力次第だろう。」
「・・・そうだな・・・。」
グリズの言葉に、シュベールとフォックスが頷く。
「・・・ところで、グリズは例のフィーに会ったんだろ?」
「あーー、それが・・・ラビの奴に隠された。」
「「なんでだよ!!」」
「俺だって、会ってみたかったわ!!」
「・・・ほぅ。誰に会ってみたいって?」
「「!!!」」
「ぼ、ボルク様!! なぜ、こんなところに?」
扉に寄りかかるように立っていた灰色に銀の混ざった長髪を青のリボンで結えた男の頭上の耳が動く。金の装飾に、白の詰め襟。
「ボルク様〜、お供もつけずに出歩かないでくださいよぉ〜!!!」
「ああ、すまない。けれど、ここほど安全なところはないだろ?」
「そうですけどぉ〜。」
後から顔を覗かせた狐獣人にホッとしつつ、シュベールがお茶を勧めた。
「はぁ・・・まぁ、わかってましたよ。中央に連絡したのは、俺ですしね。」
「だから、私がきたんじゃないか。」
出されたカップに口をつけながら、にっこりと笑った顔の人懐っこさは、負傷したボルテを連想させた。
「それで『フィー』とは誰だい?」
「それは・・・。」
しどろもどろになるグリズに、フォックスとシュベールも良いよどむ。
「・・・そんなに、言えない様な相手なのかい?」
「・・・それが、私たちもはっきりと会った事は無いので・・・。」
「なるほど。それじゃぁ、話を変えようか?」
人懐っこい顔から、一転して空気が変わる。
重苦しい空気に、グリズの息が詰まる。
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