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第29話:ルテとフィー。
ふわふわの毛が鼻先をくすぐる。
思わず、そのくすぐったさに目が覚めた。
「…フィー、くすぐったいよ。」
「うにゃ。」
「っわ! どうした、フィー? あはは、そんなに舐めるなって。」
ぺろぺろっと、顔を舐めるフィーを抱き上げると腕に巻かれた包帯が目に入った。
「ああ、フィー。これが気になるのか?」
「うにゃ。」
「そっかぁ〜。ごめんごめん。」
「うにゃ〜。」
すりすりと頬に擦りよるフィーを胸に抱えなおすと、ゴロゴロとフィーの喉がなる。
「可愛いなぁ。フィー、小さくて暖かいね。」
「にゃ〜。」
ぺろっと、フィーの舌がルテの首筋を舐める。
「何? どーしたの、フィー。」
ぺろぺろと舐めるフィーが、ゆっくりと立ち上がる。
「こーらっ、しっかり抱っこされててよ。」
「うにゃー。」
「うわっつ、ん・・・、フィー・・・ん。」
フィーの小さな舌が、ルテの唇を舐める。何度も舐め、フィーとルテの舌が絡みつく。
「フィー・・・ん・・。」
ふわふわの身体を抱きしめて、頭を撫でる。
「うにゃ〜」
「そういえば、フィーはいつ獣化を解いてくれる・・・?」
「・・・なんだ、わかってたの?」
そう言って獣化を解いたフィーがルテの腕の中に現れる。
黒かった毛並みは、サラサラの黒髪に。金色の瞳に、桃色の唇。
ぴこぴこっと耳が動く。
「うわっ、フィーって獣化してなくても可愛いんだね・・・。」
「ふふ・・・何それ。ぼくが可愛いいって言うの家族とルテだけだよ。」
「そうなの? こんなに可愛いのに・・・。」
腕の中で、獣化を解いたフィーをそのまま抱きしめると、そっと包帯を巻かれた腕にフィーの手が触れる。
「フィー」
「・・・痛い?」
「痛くないよ。それに、フィーが一緒だから、大丈夫だよ。」
「本当に?」
金色の瞳が、ルテの顔を見上げる。
金と碧の瞳と視線が絡まり、どちらとともなく顔近付く。
「フィー・・・」
「ルテ。ルテ・・・」
「フィー。好きだ。」
「ん・・・る、ルテ・・・。んぅ。」
静かな部屋に、水音が響く。
最初は軽い触れ合いが、いつの間にか深くしっかりとした口付け合っていた。
ルテの手が、フィーの身体をゆっくりと撫でる。
「ん・・・あっ。ルテ・・・あっ・・ん。」
「あぁ。フィー・・・可愛い。ここ、気持ちい・・?」
「んっ・・・る、ルテ・・・気もちぃ・・・」
どんどんと互いに昂まっていく。
「あっつ・・・る、ルテ・・」
「うん・・フィー、一緒にいこ?」
「あっ!ああぁ!!!」
「っくッ・・・!! フィー!!!」
ルテの大きな掌に、フィーの吐き出された精を受け止めた。
「フィー、一杯出たねぇ・・・、ん。フィーの味だ。」
「!!ルテ!! な、舐めたの!!?!! し、信じらない!!」
「なんで? フィーのだったら、美味しいのに。」
「・・・なんで?なんで、そう言い切れるの?」
「えっ? フィー?」
「ルテと僕は、出会ったばかりなんだよ?」
「えっ? フィー?」
「ルテだって、本当の僕を知ったら嫌いになると思うよ。」
「フィー・・・?」
ガリっつ、包帯の上から爪を立てられ痛みが走る。
さっきまでの幸せな気持ちから一転して、フィーの態度が冷たいものに変わる。
「ふ、フィー?」
「気安く呼ばないでくれる? 僕は、ここに無理やり連れてこられたんだよ。」
「そ、それは・・・」
「本当の事でしょ? 僕を本当の場所に帰してよ・・・。」
「フィー・・。」
どんと突き放され、フィーがベットから出ていく。
そのあとを追いかけるが、追いかけても追いかけてもフィーに手が届かない。
いつの間にか、辺りは暗闇に包まれていった。
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