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第32話:目覚める。
なんだろう・・・?胸のポカポカする・・・。
ふかふかしていて気持ちがいい。
ん? 何か音が聞こえる気がする・・・。
うわっ・・・、ざらざら・・くすぐった・・・
「・・・フィー?!」
「うわっつ!!! やばっ・・・」
「あ、あれ? 今・・・。」
「うにゃん?」
「あ・・・フィー!」
ずり落ちたベットカバーから、フィガロが顔を覗かせたと思った瞬間、ベットに飛び乗った。
「ふ、フィー?!」
「うにゃー。」
ぺろぺろと顔を舐めるフィガロに、ボルテは慌てながらもしっかりと抱き留めた。
「何?どうしたんだよ・・・」
フィガロを抱き止めた自分の腕に、巻かれた包帯が目に入る。
「・・ああ、そっか。」
ベットの周りを見ると、誰かがそばにいた形跡があった。
「? あれ、誰か世話してくれたのか・・・。」
「にゃん。」
「あ! フィーが世話してくれたのか〜??」
「にゃん。」
「そっかー! 心配かけたよね・・・、ごめんね。」
「うなぁ・・・。」
フィガロの頭、顔を撫で、喉元をくすぐる。
ゴロゴロ。
ゴロゴロ・・・。
「うなぁ・・。」
ボルテにすり寄ってくるフィガロの暖かさに、ぎゅっと胸が締めつけられる。
「フィー。本当に、心配かけたね・・・。」
ぐぅぅぅ。
「あ、そういえば・・・、お腹すいたかも。あれ?そういえば、フィーのご飯って・・・」
「にゃん」
ボルテのその言葉に、フィガロがベットから飛び降り、台所へ向かった。
その後を、ボルテがゆっくりとついていく。
何度か、ボルテを振り返りながら見る。少し、やつれたボルテは壁に手をついていた。
「うわっ・・・。」
少し足がもつれたボルテに、フィガロが飛んでくる。
「なぁうぅ。」
「ぁ・・・あ、大丈夫だよ。・・っと、凄い。ご飯がある。」
「うにゃ。」
台所のテーブルに、まだ湯気の立っているスープ。チーズがのったパン。軽く焼き目のついた野菜。ゆっくりと、ボルテが席に着くと、フィガロがテーブルの上に乗る。
「ああ、一緒に食べようか。」
食事を始めようとしたその時、ボルテの家のドアがノックされた。
「うにゃ!!」
その音に、フィガロがドアの方を振り向いた。
「! ぼ、ボルテ!お前、目覚めたのか!!!」
「ぐ、グリズ隊長!!」
勝手に入ってきた、グリズにボルテは慌てて立ち上がるが、それをグリズが片手で静止する。
「ああ、座ってていい。・・あれ? おまえ1人か?」
「え・・・っと、はい。」
「そっかぁ。っと、飯の最中だったか・・・。」
「え?あ、はい。良かったら、グリズ隊長もどうですか?」
「ん・・ああ、少し邪魔するわ。」
「いえ・・・、あ、今お茶でも・・。」
「いや、大丈夫。ボルテは食いながら話を聞いてくれないか。」
「・・・それでは、お言葉に甘えさせていただきます。」
「ああ。」
グリズは、ボルテの前に腰かけ、部屋の中の気配を少し探った。
「・・・何か、気になります?」
「ん・・・ああ、悪い。 フィーだっけ?いないのか?」
「えっ・・・あ。あれ? 本当だ、フィー??? 」
勢いよく、席を立ったボルテにグリズが慌てて座らせる。
「だ、大丈夫だって。 おまえの寝室の方に、気配を感じたから。」
「はぁ・・・、もう、驚かせないでくださいよ!」
「す、すまん。」
ボルテがほっとした様子で、スープに口をつけた。
「ん、美味しい。」
「・・・カウミルクか・・。」
テーブルの上に並んだ素材を眺めながら、寝室の方の気配をグリズは探っていた。
ラビの所で働き出した『フィーガ」という獣人に、ボルテの世話を頼んだと言っていたが、その獣人の気配はなさそうだな・・・。寝室に感じる小さな気配は、きっとボルテの言う『フィー』だろうし・・・。
「・・・一口だけだったら、あげましょうか?」
「大丈夫だ。ボルテのための食事だろ?しっかり食べてくれ。」
「あ、そういえば・・・ここまで運んでくれたのって、隊長ですか?」
「いや、兎まい亭のラビだが・・・。ボルテ、あの日の事をどれくらい覚えているんだ?」
「・・・あの日ですか?そうですね・・・。」
食べていた手を止め、少し空を見上げるとグリズに向き合った。
「あの日、茂みからフィーが飛び出してきたと思った瞬間から・・・気がついたら自室のベットでした。」
「そうか・・・。ちなみに、あの日から今日で14日経ってる。」
「えっ?!! ってことは、あの『フィー』は幻影魔獣だったんですか?」
「おまえのところの「フィー」が幻影魔獣かは解らないが、おまえを襲った魔獣はそうだな。だから、おまえが無事に目覚めて本当に良かった。訓練には、参加できそうなら明日から参加してくれ。おまえの体調が整い次第、北の外れの調査に行くことになる。」
「!! わかりました。」
「それに、今回の件。中央が、指揮を取るかもしれない。」
「えっ・・・。」
食事をしていたボルテの手が一瞬止まり、ボルテの顔付きが変わった。
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