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第39話:キャベツ畑?
空を切る音を響かせながら、朝から大剣を振るボルテの姿が、訓練場にあった。
何度も何度も剣を振る姿は、鬼気迫るモノがあった。
「ボルテ、少しは休憩も取れ!!」
「!! グリズ隊長。おはようございます。」
「おはようじゃ無い!! もうすぐ、昼過ぎになるぞ!! 一体、何時間剣を振る気だ!!!!」
「・・・そんなになりますか?!」
「はぁ・・・、調整しろとは言ったが、無理をしろとは言ってないぞ。」
ボルテは、剣を振る手を止め汗を拭った。
兎まい亭で、フィガロを見つけた日からボルテの中に、言い様の無い感情が渦巻いていた。
その感情を発散させるかの様に、ボルテは早朝から深夜にかけて訓練に勤しんでいた。
グリズを初め他の隊員たちもその様子に気づいていたが、ボルテの様子に口を出せずにいた。
「・・・まったく。一体、何があったんだ?」
「何がですか?」
「・・・何がって、何かあったんじゃ無いのか?」
「・・・特には、何も無いです。」
「・・・・はぁ。ちょっとついて来い。」
「・・・はい。」
グリズについてやってきたのは、兎まい亭だった。
一瞬、足を止めたボルテにグリズは気づかない振りをして中に入っていく。
「あら、グリズ! いらっしゃい。」
「お、もう良いのか?」
「ええ、リサが張り切って面倒見てくれてるのよ。 って、あらボルテも今日はいるのね。」
グリズの後ろにいるボルテに、ナミが声をかけた。
「・・・はい。 ところで、今日フィーは?」
「・・・あぁ。今日は、もう帰ったわよ。」
「・・・そうですか。」
「んだぁ? フィーって、ボルテんとこのか? ここにきてるのか?」
グリズのその言葉に、一瞬空気が固まる。
え・・・何、この感じ?!
「な、ナミ。今日のランチで残って方2つ。あっちの席でよろしく。」
奥の席を指差し、ボルテを連れて座った。
「はぁ・・・、お前のそれ・・・。」
「なんですか。」
「あー。いや・・・、どーすっかね。」
目の前に座ったボルテの顔を、グリズはまじまじと見る。
家篭り前は、伸ばしっぱなしになっていた銀髪は、バッサリと切られ、幼なさが残っていた金と碧のオッドアイは、精悍さが増した。幻影魔獣に負傷し眠りに落ちた期間に、身体から脂肪は落ち、無茶とも言える訓練で筋肉の量が増えた身体は、ギュッと絞られていた。
「で『フィー』って、お前の・・・ん?なんでナミが知ってるんだ?」
「・・・日中は、ここにいるみたいで・・。」
「そうだよ! フィーガ・・・フィーは、ここでお昼食べてるんだよ。 ランチお待ちどうさん。」
料理を運んできたナミが会話に割って入る。
「・・・ナミさん、フィーです。間違えないでください。」
「まったく、そんな小さな事気にするなんて、小さな男だね!! ドンと構えてりゃ良いのに!!」
「・・・」
無言で運ばれてきたランチを食べ始めたボルテに、グリズは何て言葉を続ければ良いのか悩んでしまった。
ボルテの様子から、「家篭り」の相手が見つかった、イコールで捉えてしまったが・・・・。
まさかのまさかだが・・・、ボルテのやつ。未だ、童貞なのか・・・?
むしろ、こいつ・・・、初恋すらまだなのでは?
そんな相手に、嫉妬だヤキモチだの・・・言ったところで、伝わるのか?
それよりも、一度「フィー」に会った方が、良いのかもしれないな・・・。
とりあえず・・・。
「ボルテ、お前、童貞か?」
「ゲフォ!!! はっ?! な・・・なん・・・ゲホッ」
「あー・・・、そうか・・・。そうかぁ・・・。 まぁ、お前ぐらいの歳じゃ、そうだよなぁ・・・。」
「急に、なんなんですか!? お、オレだって成獣間近ですよ!?」
「あぁ・・・そうだった。成獣前だったなぁ・・・。」
「グリズ隊長も、急に変なこと聞かないでくださいよ!」
「・・・まさかだが・・・子作りの仕方は知ってるよな?」
「・・・グリズ隊長・・・3枚下ろしと、ぶつ切りどっちが良いですか?」
「・・・・すまん。冗談だ。」
ブリザード級のボルテの視線に、グリズの背が冷えた。
無言で、ランチを食べすすめていたボルテがぽつりと漏らした言葉に、グリズはさらに頭を抱えたのだった。
「・・・ラビさん達は、どこの畑でもらってきたんだろ?」
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