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第40話:言えないよ。

あの日から、ルテの様子が変な気がする。 朝目が覚めると、ボルテの姿は無くご飯も冷めている事が増えた。 「・・・やっぱり、外に出てたのがダメだったのかなぁ。」 冷めた朝ご飯を、温め直しながらフィガロも悩んでいた。 すっかり自分が、獣人であることを伝えるタイミングを逃した上に、リサとナミには獣化した状態で喋れる上に、あの能力の事をバラしてしまったのだ。 「・・・フィーガ、あんた獣化できるのかい。」 「はい。」 「しかも・・・、あの時の力は・・・あんたが?」 「・・・はい。」 「・・・そう、この子も私も救ってくれてありがとう。」 「・・・え。」 「なんだい?私達が、あんたの秘密話すとでも思ってたのかい?」 「そ、そんな事は!」 「安心しな、私達はあんたの味方だよ・・・。」 そう言って、ナミはフィガロを抱きしめたのだった。 もちろん、ラビもリサもナミと同様にフィガロの秘密を守ると言ってくれたのだった。 そのおかげで、フィガロは今もボルテの留守に「フィーガ」として兎まい亭で働いているのだが、タイミングなのか未だに「フィーガ」の時にボルテと遭遇する事はなかった。 その所為もあってなのか、ボルテは「フィー」が兎まい亭にご飯をもらいにきていると思っているのだった。 はぁ・・・、獣化を解いてルテの帰りを待っても良いんだけど・・・。 いきなり部屋に、知らない獣人がいるのもなぁ・・・。 それに・・・もし・・・追い出されたらどうしよう・・・。 首から、皮袋を外し中身を確認する。 兎まい亭で働き始めてから、ほとんど使う事のない給金は少しずつ貯まっているが、ボルテに追い出されてサウザに向かうには、少し心許なかった。 ・・・もう少し、貯まったらルテに話そう。 そう何度も、言い訳をしてきていた。そのツケが今なんじゃと、フィガロは思っていた。 「ってか、あんた。ボルテにはなんで話してないさ?」 「・・・その・・・タイミングが・・・。」 「タイミング・・・ねぇ。けど、あの子中央のと調査に出ちゃうんだろ?それなら、話した方がいいんじゃないかねぇ? あの家に1人でいなきゃなんだろ?」 「・・・はい・・。」 「それに、昨日あんたが帰った後に、グリズがボルテを連れてきたんだけど・・・どうにもあの子の様子がおかしかったんだけど・・・。家でもあんなんなのかい?」 「・・・あー。どんな感じでしたか?」 「そーねぇ・・・、なんだか行き場のない感情を持て余してる感じ?」 「・・・・そう、ですか。」 「まぁ、2人の事だ。今日にでも話したらどうだい?」 「・・・考えておきます。」 そう答えたフィガロだったが、その日ボルテが帰宅したのはいつもよりもだいぶ遅い時間だった。 玄関の開く音で、いつもの様にボルテを出迎えに行くと疲れた顔で、フィガロを抱き上げるとそのままベットに入ってしまう。 「うにゃ・・・」 「あぁ・・・フィー、ごめん・・・。ご飯・・・。」 「・・・。」 ぺろりと、フィガロがボルテの頬を舐める。 「・・・あれ? フィー、ミルクの匂いがする? また、ラビさんのとこ?」 「?!」 「・・・フィー、おやすみ。」 枕元に、フィガロは取り残されたまま、ボルテは背を向けて寝てしまった。 ・・・ルテ? やっぱりもう、僕と居るの嫌なのかな・・・? 銀色の髪に、フィガロは顔を埋めながらその日は眠りについたのだった。  
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