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第43話 子種とは・・・

「うわっ・・・、フェイ! お前、噛みすぎだろ・・・。」 首筋にくっきりと残る噛み跡に、小言を言いつつもピンイの口元は緩く上がっていた。 「はいはい。これでも巻いておけ。」 フェイの腕に巻いてあった布をピンイの首に巻きながら、フェイがピンイに口付ける。 「ふっは・・・。おま・・・マーキングしすぎじゃね?」 「別に嫌じゃないだろ?」 フェイがニヤリと口の端を上げて笑みを浮かべれば、ピンイも同じ様に笑った。 待ち合わせた食事処は、兎まい亭の丁度反対側に位置し、大通の最終地点近くの市外にある所だった。近くに、宿屋も多くノーザ以外の大陸から来た獣人も多く利用していた。そこは、娯楽の少ないノーザの唯一の歓楽街とも言える場所だった。 巡回に来た事はあっても、利用することの無かった場所に、ボルテは少し緊張していた。 少し薄暗い店内は、キャンドルが灯されていた。店内では、生演奏が流れいた。 思わず、キョロキョロと店内を見回してしまう。 「おい。こっち!」 奥のテーブルでピンイが手を挙げ、ボルテを呼んだ。 料理を注文していフェイも、ボルテを見た。 「勝手に注文したから、食いたいもんありゃ追加しろ。」 「えっ・・、あ、はい。」 メニューを手渡され、ボルテもフェイの隣に座る。 丸テーブルの上に色々な料理が運ばれ、ボルテの前にも琥珀色した飲み物が置かれた。 「・・・あ、これ。」 「安心して。それは、ジュースだから。俺らのは、お酒だけどね。」 恐る恐る口をつけると、果実の甘い香りが口の中に広がる。 その甘さに、ほっとする。 うん・・・。何か混入された形跡はなさそうだな・・・。 ボルテがふと視線を上げると丁度、ニコニコしながら、食事を頬張るピンイの口元にソースがついていたのをフェイが指で拭う所だった。 な、なんていうか・・・この2人。気が付かなかったけど・・・匂いが凄いな。 「ん? どうかした、おかわりでも要るか?」 「・・・いえ。大丈夫です。」 ピンイの首筋に見える鬱血痕や、噛み痕に思わず赤面してしまう。 その反応に、ピンイが態とらしく、フェイの頬に顔を擦り寄せそのままフェイの唇を舐める。 「・・・オイ。まだ、一杯も飲んでないのに酔ったのか?」 「ふふ、アレ見たらちょっと揶揄いたくなって。」 フェイが、ピンイに少し咎めるような口調で囁けば、目の前のボルテをピンイは指さした。 「・・・・だ、大丈夫か?」 真っ赤になって、尻尾を膨らましているボルテに、思わずフェイも心配してそう声をかけてしまっていた。 「あ、あの・・・はい。大丈夫です。と、いうか・・・その・・・2人は・・・。」 「相棒兼恋人かな。」 「恋人・・・。番ではないんですか?」 その言葉に、フェイの耳がピクリと動いたが、ボルテは気づかず言葉を続けた。 「番じゃないのに、そんなにマーキングを?」 閉鎖的なノーザでは、基本的に相性の良い者同士は恋人期間も短くすぐに番う為、ボルテには恋人という関係がイマイチ理解できていなかった。 また、グリズやシュベール達も番相手と仲睦まじく、ピンイ達の様に見せ付ける様な行為をボルテは見た事は無かった。 「あー、これでしょ? 凄いよね。こことかヤバくね?」 そう言って、ピンイはボルテに首元を広げて見せた。 「!!」 思わず、鼻を押さえ赤面するボルテの横で、涼しげな顔でフェイはグラスを煽っていた。 「お前が、犬なんか構うからだろ。」 「あはは。フェイってば、まだ妬いてんのか?」 「? 焼くと、マーキングするんですか?」 今だ鼻を押さえているボルテが不思議そうに、ピンイ達の事を見る。 この2人がお互いを想い合っているのは、2人から香る匂いでボルテには判っていた。 それも、ピンイの中からも濃くフェイの香りがしている事が、ボルテにはなんだか覗いちゃいけないものを覗いた気にさせていたのだった。 けれど、ピンイの言葉にボルテの理解は追い付いていなかった。 「・・・お前、俺を馬鹿にしてるのか?」 「? フェイさんを? なんで、ですか?」 「・・・。オイ、ピンイ・・・。」 ボルテの真っ直ぐな視線が、フェイの嫉妬心を揶揄って聞いたのでは無いと物語、フェイの顔が若干引き攣る。逆にピンイの顔は面白そうにニヤけた。 「あはは。ボルテは嫉妬とかヤキモチとかしたこと無いの?フェイってば、君に嫉妬して何度も俺の中に出して・・・。」 「オイ、ピンイ!」 「・・・中に出すですか? 何を出すんですか?」 「あははは!!!」 「・・・マジか。」 ピンイが、勢いよくグラスを空け、店員におかわりを頼む。 「あの・・・何を出すんですか?出したら、嫉妬心は治るんですか?」 ボルテは、笑ったままのピンイを横目に、フェイに真剣な顔で質問をしていた。 「・・・はぁ。 俺は、こんなガキに妬いた訳か。」 「?? 焼くって、フェイさんは何を焼いたんですか?」 ガックリと項垂れたフェイの頭をピンイが撫でた。 「ボルテは、好きな奴とかいんのか?」 「・・・好きですか? それは、どんな感じですか?」 サラダに、フォークを刺しながらボルテは考えるが、よく分からずピンイに質問を続けた。 「あー、そうだな・・・。こう、自分だけのモノにしたいとか、他に行ってほしくないとか・・・、こう・・・ココがドキドキする様な相手だな。」 ピンイが、ボルテの胸を指さすと、ボルテも自分の心臓の部分に手を置いた。 「・・・ここは元々、ドキドキしていますよね?」 「・・・そうだな。けど、好きな奴を前にすると、そのドキドキが早くなったり、止まりそうになったりするんだよ・・・。」 「えっ!? それは、毒か何かですか!?!」 「・・・・。違う。けど・・、まぁ毒より厄介かもな。」 「へぇ。」 もしゃもしゃと、食事を続けるボルテに、フェイとピンイの酒の量が嵩む。 「ってか、ボルテは子作りの仕方とか知っているのか?」 「・・・子作りですか? 番ができた時に、一緒にする事ですよね?」 ボルテのその言葉に、フェイが思わず反応してしまう。 「・・・まぁ、番じゃなくても、するけどな。」 隣にいるピンイの腰に腕をまわしながら、ピンイに囁く様にボルテの問いに答える。 ピンイもフェイの腕をひと撫でしながら、フェイにしなだれ掛かる。 「お、フェイ。復活したのか〜? ってか、お前のは、回数より一回が長い。」 「お前が、イキすぎるだけだろ。」 2人の会話がわからないボルテは、2人の空気を割って質問をしいてた。 「それって、番じゃなくてもして、良いんですか!?! だって、子供出来たらどうするんですか??」 「「・・・」」 「あ、そうか・・・。迎えに行かなかったら、孤児院が引き取るのか?」 「えーっと・・・、ボルテ? 俺らの性別って認識してるか?」 「え? お二人とも、同じ雄ですよね?」 「お、おお。」 「そ、それとも、ピンイさんは雌だったんですか!そ、そうだったらすいません!!」 「・・・いや、雄で合ってるけど・・・。その・・・、ボルテはどうしたら子供ができるのかは知っているんだよな?」 「・・・それ、こないだうち隊長にも聞かれたんですよね・・・。 私も、もう成獣になるんですよ? 」 「そ、そうだな・・・。」 「それに、まだ子供も育てるには相手がいないし・・・・って、あ・・・そうか。引き取りに来なかった子を育てれば良いのか・・・。」 「・・・待て待て・・・ボルテ、ちょっと待て!」 「?」 ボルテが言い出した内容に、ピンイが待ったをかけた。 「引き取りに来なかった子ってのは、孤児のことか?」 「はい。」 「子を育てる相手はいないんだよな?」 「はい。なので、子供を育てることはまだ出来きませんが・・・。」 「・・・そうか。けど、自分の子供が欲しいとかは無いのか?」 「自分の子供ですか?」 「あぁ・・。」 「!! ってことは、ピンイさんはどこに行けばいいか知ってるんですね!!」 「??? どこにイク???? え・・・いや、イクってのはそういう事じゃ・・・」 「グリズ隊長にこないだ聞けなかったんですよね。子種を貰いに行って育てるんですよね!!その種ってどこでもらうんですか?」 「「!!!!?????」」 ボルテの発言に、質問を続けていたピンイも黙って聞いていたフェイも固まってしまう。 「ちょ・・オイ!フェイ、あれは本気だと思うか?!」 「・・・わ、わからん。 だが、あれが嘘をついている様にも見えないんだが・・・。」 ボルテに聞こえない様に、ピンイとフェイはヒソヒソとするが、ボルテには2人が何故そんなことを聞いてきたのか検討もつかずにいた。 「あ、あのさ・・・ボルテ。雄同士じゃ、子供はいくら子作りしてもできないんだ。」 「え? けど、子供のいるところもありますよね?」 「ああ・・・、そういう所こそ、さっきお前が言った様に孤児院で子供をもらってきたり・・・、親戚筋から養子を取ったりするんだが・・・・・。」 「けど、子種を貰えばできるんじゃ無いんですか??」 「あぁぁ・・・・。それ、おまえ・・・植物の種とかと同じだと思ってるだろ?」 「・・・・違うんですか?」 「違う。」 「へぇ。なら、その種ってどんなのなんですか?」 「・・・・お前、流石に・・・、自慰の経験位はあるよな???」 「爺? いや、うちには爺は居なかったですよ? あ、叔父の所には、世話役の爺がいたのですが・・・・。」 「違う!!!!!それは、きっと執事かなんかだろ!!そうじゃねーよ!!マスターベーション!!オナニーだよ!!!!!!」 「!! な、何を急に言い出すんですか?!」 ピンイの突然の下ネタに、ボルテの顔が徐々に赤くなっていく。 国境警備隊と言う仕事柄、気性の荒いものや粗暴な者が多く仲間内での下ネタは飲みの場の鉄板話題でもあったが、ボルテは隊最年少をと言う事もあり、そういった場には呼ばれる事はなかった。それに加え、実力も隊内でトップを争う程だったが為、力でボルテを手籠にする様な不埒な輩も居なかった。それ故に、ボルテに対して隊員たちは性を匂わせる様なモノは近づける事はなかった。副隊長になった今、ボルテに性教育をするものはほぼ居なかった。 巡回中、市内の雌に秋波を送られても、ボルテは一切気がつくことはなかった。 その巡回中に、同世代位の店屋の獣人達が「オカズ」いついて話しているのを立ち聞きしてそれが「マスターベーション」に必要なものなんだと知ったのだった。 その事をピンイ達に話すと、盛大なため息をつかれた。 「マジかぁ・・・。そこからかよ。」 ピンイがふと、店の2階部分へ視線を向けると少し薄暗くなった場所からガッシャンとガラスの割れる音と、激しい物音と共に怒鳴り声が、聞こえてきた。 「んだと!!テメー!!殺されてぇのか!!!」 「「「!!」」」 聞こえてきた声に、店の従業員が慌てて支配人を呼びに動く。 ボルテは、音のした2階へと駆けて行った。 「ちょ! ボルテ!!待て!!ここの2階は・・・」 ピンイが慌ててボルテを追うが、すでに階段を駆け上がっていたボルテはピンイが追いつく頃には、音のした部屋の扉を開けていた。

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