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第44話: この感情は?

勢いよく開け部屋の中で、斑柄の獣人が、少し小柄な獣人の頭を掴んでいた。 掴まれていた獣人の姿に、ボルテは息を呑んだ。 部屋の中は薄暗く、窓も閉め切られ。お香が焚かれていたのか、煙で薄らと白くもやが掛かっていたその中で、黒く艶やかな髪に黒の三角に尖った耳。こちらを見る瞳は暗闇の中で金色に光、その身体には必要最低限の面積しかない下着が付けられていた。 「・・・フィー?」 思わず、ボルテはそう口にしていた。 その言葉に、黒髪の獣人が斑柄の獣人を突き飛ばした。 「!! た、助けて!!」 「んだと!!テメー!!」 部屋に入ってきたボルテに、黒髪の獣人はすがり寄ると、斑柄の獣人は怒りに顔を赤くしながらボルテへと突進してくる。 「金は払ってんだ!!今更、出来ねえっておかしいだろ!!!!!」 「えっ・・・?」 「!! そ、そんなのオレしらないっつ!!!」 ボルテの服に震えながらしがみついた獣人の尻には、黒く細い尻尾が垂れ下がっていた。 「うるせー!!!さっさと、股開けってんだ!!!! うわっ!!!」 ボルテにしがみついたついていた獣人を引き剥がそうと、突進してきた斑柄の獣人をボルテが逆に押さえつける。この獣人も、上半身には何も身につけてはおらず、下半身は乱れた状態だった。 部屋には、乱れたベットが置かれ、ベット横のチェストの上には硬貨が何枚か置かれていた。 「・・・とりあえず、これでも着たらいい。」 ボルテにしがみついていた獣人に、着ていた上着を羽織らせると突進してきた獣人を、ボルテは後からきた店の支配人達に引き渡した。 「あ、ありがとう・・・。」 「い・・いや・・。怪我はない?」 「は、はい。」 上着の合わせから、チラチラと覗く白い身体にうっすらと赤く散らばった痕に、ボルテの身体がぎゅっとなる。見てはいけないと思い、床の方へと視線を逸らそうとして今度は、彼の下半身が目に入る。同じ様にところどころ赤く、テラリっと濡れ光っている太腿。 「あっ・・・。」 コプっ ツーッと太腿に伝う、白濁にさっきまで居た斑柄の獣人とは違う匂いに、ボルテは、言い様の無い衝動に駆られそうになった。 グルルゥ・・・ 「おい!駄犬。突っ走んな。」 「ぐるっつ!!」 唸り声を出しながら、衝動のまま動きそうになっていたボルテの首根っこをフェイが捉え、パッシっと一発後頭部を叩いた。 「・・あ、フェイさん・・。」 「お前・・・今、何しようとした?」 「・・・」 フェイの視線の先には、自分の上着をきた黒髪の獣人がピンイに守られていた。 ボルテは、自分が衝動のまま彼を喰いたい。そう感じたのだった。 自分以外の匂いを垂れ流した彼に、自分の匂いを刻み込みたい衝動に駆られたのだった。 「フェイ、そいつ連れてけ。」 「ああ。」 ピンイに促されフェイは、ボルテの腕を引きずり部屋を出る。 「・・・はぁ。お前、それ抜いてこい。」 「・・・抜く?」 フェイに指差され、自分の股間が膨らんでいる事に気がついた。 「えっ? な、なんで? ぬ、抜く??」 「っ・・ぁぁあ。クッソ。こい!!」 「!?」 空き部屋に、ボルテを引っ張り込むとベットの上に座らせる。 「抜くってのが自慰の事だ。」 ボルテを後ろから抱え込むと、ズボンの前を緩め起立した陰茎を出した。 「ふ、フェイさん!?!!」 「俺だってお前のなんか触りたかねぇ!!いいか、自分でやれ!!」 ボルテの左手を掴み、握らせる。 ベット横の引き出しから、蜜瓶を取り出すとボルテの左手ごと瓶の中身をぶちかけた。 「うわっ!! つめたっつ・・・。んっ・・・。」 冷たさにボルテの左手が自身を握り込むと、ニュルニュルっと蜜が滑る。 ニュルニュルとした刺激に、ボルテの左手は動きが止まらなくなる。 「・・くっつ・・・あ・・・。」 「・・・はぁ。あと、一歩ってところか?」 さっきから単調な動きを繰り返すボルテに、フェイが背後から囁く。 「ボルテ・・・、さっきの光景を思い出せ。彼をお前はどんな風にしたかったんだ・・・?」 「・・・ふっ・・・、ん・・・・。」 フェイの言葉に、導かれるようにボルテは目を閉じ、さっき見た光景を思い浮かべた。 黒髪、金眼の獣人の身体に散らばっている赤く鬱血した痕。太腿を伝う、白濁とした液体。 段々とボルテの呼吸が荒くなっていく。 欲望のままに、自分の匂いを付けたい。 あの白く柔らかそうな身体に、噛みつきたい。 彼に・・・フィーに、自分の欲望を・・・ぶつけたい。 そう思った瞬間、ビュルルルっとボルテの起立した陰茎から勢いよく精子が発射された。 「くっ・・・!!」 「・・・うわ、お前・・・随分溜めてたんだな・・・。」 ドクドクと出続ける、精液に若干引きつつ、いつの間にかベット横に移動していたフェイは ボルテに濡れ布巾を手渡した。 呼吸を整えながら、ボルテは手渡された濡れ布巾で、自身の出したモノを拭き始める。 「オイ、小僧。さっきお前のソレから出たのが、子種だ。」 「えっ・・・?」 「それを、雌の中に出すと子供ができる。雄同士だと、子供は出来ない。」 フェイの言葉に、拭いていた手をマジマジと見る。 ドロリとしたそれは、前にフィーと風呂場で出たモノと同じだったが、ボルテの気持ちは少し複雑だった。 「それと、さっき何想像したんだ?」 「えっ?」 「あの部屋に焚かれていた香は、興奮作用と理性を下げる作用がある。その中でお前は、何を感じた?」 「・・・、そ、それは・・・、あの獣人から自分以外の匂いがするのが・・・嫌だと感じて・・・。」 「ふーん。それは、嫉妬だろうな。」 「・・・嫉妬ですか?」 部屋に置かれた果実水をグラスに注ぐと、フェイはボルテにも手渡した。 酸味のある果実水は、ボルテの喉を潤し、思考をクリアにしていった。 「・・・フェイさんは、何故嫉妬したんですか?」 「ぁあ“?」 「ピンイさんに、ベッタリとついている匂いは、フェイさんの子種の匂いですよね?」 フェイの動きが一瞬止まり、殺気が溢れたがボルテはグラスを持ちながらしっかりとフェイを見ていた。その顔が、揶揄いや冗談で聞いているのでは無い事をフェイは知ったので、少し考えたがフッと口元を少し上げてボルテに答えた。 「・・・・・。そんなもん、俺以外に目を向けるのが悪い。アイツは俺のモンだからな。」 「・・・。」 フェイさんのモノ。 それなら、フィーは・・・? フィーは、あんなに色々な匂いをつけて・・・。 僕だけのフィーだったのに。 「!そうか・・・、僕は、ラビさんに嫉妬したんだ!」 「あ? なんだ、急に。」 「最近、言い様の無い感じがあったんですが・・・、そっか・・・。これが、嫉妬。」 ボルテは自分の胸元に手を当てた。 その様子にフェイは、軽く頭を押さえた。 コンコンとノックの音と共に、ピンイが顔をのぞかせる。 「もう、入っても良いか?」 「ああ。」 ベットの上のボルテを横目に、ピンイはフェイの近くに駆けていく。 スンっとフェイの匂いを嗅ぎながら、フェイの顎にグリグリっと頭を押し付けた。 「・・・お前がやってないよな?」 「・・・当たり前だろ?」 「けど、ボルテの匂いがついてるぞ。」 ペロリとフェイの顎を舐める。ザリザリとした舌の感触に、フェイが笑いながらその舌に自分の舌を絡める。 ボルテの目の前だという事を、2人は少しも気にする事なくピンイが満足するまで口付け合っていた。それを、ボルテはどこか羨ましく感じていた。 「あの・・・そろそろ、良いですか?」 「ん・・・あ、あぁ。」 名残惜しそうに、ピンイの舌がフェイの唇を舐め離れる。 「さっきの騒ぎは、単に金銭トラブルらしいわ。いちを明日、当事者達に事情を聞く事にしたから。」 「あ・・・はい。ありがとうございます。本来なら、私の仕事なのに申し訳ありません。」 「「・・・。」」 仕事モードに切り替わったボルテの様子に、ピンイもフェイも言い様の無い顔をしていたが、ボルテは心身共にスッキリとしていた。

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