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第46話:フィガロ視点

兎まい亭に届いた手紙には、一言「迎えに行く」そう書かれていた。 けれど、この手紙には何もなかった。 代筆屋が書いたであろうサインは、トネリの名だったが、トネリのサインが無かったのだ。 代わりに、フィガロが書いた4個の●。 その事が、余計にフィガロに不信感を与えた。 誰かが、トネリの近くで手紙を見たのか・・・それとも、トネリが見せたのか。 どちらにせよ、誰かがトネリの名前を語り、フィガロの身を捉えようとしていという事に、背中がゾワリとした。 その感覚から逃げたくて、兎まい亭を早上がりさせてもらったが、誰かが自分を見ているかもと不安になり、ボルテの家に急いで帰りたかったがいつもと違う道を通って帰った。 その途中、誰かとぶつかってしまったが、そんな事を気にする余裕は一切無かった。 どうしよう・・・どうしよう・・。 一体誰が? まさか? フィガロがノーザにたどり着く原因となった、あの獣人の顔がチラつく。 ど、どうしよう。もし、そうだったら・・・。 ルテの事がフィガロの頭をよぎる。 大陸が違えど、ボルテは同じ国境警備隊。それも、向こうはボルテよりも階級の上な隊員。 もし、兄弟達のように圧力をかけられたら・・・。 フィガロの体が恐怖で震える。 震えを抑えるように、自分の体を抱きしめるが不安に押しつぶされそうになる。 部屋の隅で、どれくらいの時間が過ぎたのか、いつの間にか暖炉の魔石が尽きていた。 「あっ・・・、ど、どうしよう。」 普段なら、ボルテが家を出る前に、補充をしていたのだが兎まい亭でボルテに見つかってしまった日から、朝早く、夜は遅く。朝食は用意されていたが、夕食はフィガロが兎まい亭の匂いをさせているのに気がつくとボルテは用意をしなくなっていた。 フィガロ自身も、兎まい亭で食事をとっていたし、ボルテが遅い日は食糧庫に保管してあるチーズやパン、ミルクを少しもらっていたので、特に空腹に耐える事は無かった。 ただ、ボルテとの時間が減った事が寂しく感じていた。 獣人である事も伝える前に、捨てられちゃうのかもな。 ルテと一緒にいたいのにな。 暖炉の魔石がついに尽きる。 徐々に部屋の温度が下がり、フィガロはいつものように獣化した。 いつもなら、ボルテのベットで帰りを待っていたが、寒くなった部屋でボルテの匂いのするベットに寝て待つ気にはなれなかった。 けれど、ボルテの匂いに包まれたかったフィガロは、ボルテの服が仕舞われていた引き出しの中に潜り込んだ。 ボルテの匂いに包まれながら、フィガロはいつの間にか眠っていたらしく、部屋の中が騒がしくなり引き出しの中から顔を出した。 「んにゃ?」 「フィー!!!」 引き出しの中から抱き上げられたフィガロは、久しぶりに正面から顔を合わせたボルテに、安堵を覚えた。鼻先にキスをされ、お返しフィガロもボルテの唇をペロッと舐めた。 のが、いけなかったのか?! その後に起きた出来事に、ボルテの腕の中で目覚めたフィガロは頭を抱えていた。 「ん・・フィー、起きたの? おはよう。」 腕の中で丸まっていたフィガロの頭にボルテがキスを落とすと、フィガロがボルテを見た。 「・・・おはよう。」 「・・・夢じゃ無かったんだ。」 そう言って鼻先にキスを落とされる。 ううううぅ・・・。 また、頭を抱えたフィガロにボルテは思わず笑ってしまう。 「フィー、顔見せて。ご飯にしよ?」 「・・・もう、チューしない?」 「したらだめなの?」 「・・・・・だめじゃないけど・・・。」 だめじゃないけど・・・今の僕は獣化してる状態なんだよ!!! しかも、黒猫なのに!!! あぁぁあ・・・なんて言ったらいいんだろ?どうしたらいいの?!  前足で、頭を抱えるフィガロの姿に、ボルテの口元はずっと緩んでいた。 優しく頭を撫でて、ボルテはベットから出ようとするとフィガロが顔を上げる。 「ん? フィーも一緒に行く?」 「うん。」 ボルテに抱き抱えられながら、洗面所に向かうと、ボルテがフィガロに話しかけた。 「・・・そういえば、フィー。トイレに行く?」 「! 行く!!! あ、自分で、できるから! ルテはドアの前にいないで!!!」 「えっ・・・でも・・・。」 「開けてくれたら、自分でできるから!! 終わったら、ドアをカリカリするから!!」 必死な様子のフィガロに、ボルテも苦笑しながらドアを少し開けてその場を離れると、ちゃんと中から締まり、水音がした後にカリカリとドアを掻いた。 「おー、フィーすごい!」 ドアを開けにきたボルテに、抱き上げられたフィガロは首筋に顔を埋めながら消え入りそうな声でボルテに言ったのだった。 「だから、もうルテは弄らないでほしい・・・。」 「えっ、なんで?」 「な、なんでって・・・え・・・」 「帰り遅かったら、フィートイレに行けないでしょ? ちゃんと出せなくなったら、困るし。」 「あ・・あぁ・・・そ、そうだね・・・。そしたら、少しドアあけておいてくれたら嬉しいなぁ・・・・。」 「あ、そっか。今度から、そうしておくよ。」 「・・・ありがとう。」 「出ない時は手伝ってあげるから、安心してね。」 「・・・うにゃぁ・・・。」 そのまま頭を抱えてフィガロはうずくまった。

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