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第47話:姿

ボルテとフェイが騒ぎを聞きつけて入った部屋は、独特の匂いがした。 その匂いは、春を売る遊君が使う香だったが・・・、必要以上の量がその部屋では焚かれていた。 部屋の窓を開け外の空気を入れるが、必要以上に開けては他の部屋にも影響が起きる可能性があった。 しかし、タイミングが良すぎる気がするな・・・。 ピンイが部屋の中を見回すと、サイドテーブルの上に空の小瓶とコインの入った小袋が置かれていた。騒ぎを起こした斑柄の獣人の証言通り、保護した獣人は客を取っていたのだが、その保護した獣人の様子がおかしかった。 それに、あの店の支配人も・・・。 ノックと共に中に入ると、独特の青臭い匂いがした。 「・・・お前がやってないだろうな?」 「・・・当たり前だろ?」 フェイがうんざりした顔をするが、ベッタリと付いている匂いに神経が逆撫でられる。 「けど、ボルテの匂いがついてるぞ。」 ペロリとフェイの顎を舐める。ザリザリとした舌の感触に、フェイが笑いながらその舌に自分の舌を絡める。 ボルテの目の前だという事を、2人は少しも気にする事なくピンイが満足するまで口付け合っていた。それを、ボルテはどこか羨ましく感じていた。 「あの・・・そろそろ、良いですか?」 「ん・・・あ、あぁ。」 名残惜しそうに、ピンイの舌がフェイの唇を舐め離れる。 「さっきの騒ぎは、単に金銭トラブルらしいわ。いちを明日、当事者達に事情を聞く事にしたから。」 「あ・・・はい。ありがとうございます。本来なら、私の仕事なのに申し訳ありません。」 「「・・・。」」 スッと、顔つきが変わったボルテの姿に、さっきまでの様子が嘘の様に感じた。 さっきまで、自慰もろくに知らなかったクセに・・・。 スッキリとした顔しやがって。 少しして、夜間警備にあたっていた警備隊に、斑柄の獣人と、遊君の獣人を引き渡した。 「ピンイ、少しいいか?」 「ああ。俺も、確認したいことがある。」 警備隊が連れてった、遊君の獣人の姿をピンイはもう思い出せなくなっていた。 「旦那様、よろしかったんですか?」 「ああ。あれも、そろそろ壊れる頃だったしな。」 「・・・左様ですか。」 「おかげで、探し物も見つかったしな。お前も、もう下がっていいぞ。今日は、このまま寝る。」 「かしこまりました。 失礼致します。」 カランと静かな部屋にグラスの中の氷が溶けた音が響く。 一礼をし出た部屋の重厚な扉の向こうで、「旦那様」と呼んだ獣人が、何をしていようと従者は感じる事はなかった。 ・・・・・・・ 「オイ、交代の時間だ。」 「ん?もうそんな時間か?」 「あぁ。ん? 今夜、ここに2人連れてこられたんじゃないのか?」 「ああ。ボルテ副隊長が保護した遊君とその客が居るだろ。」 上下が開いた扉から、室内のベットの足が見え、斑柄の獣人の寝息が聞こえたが、遊君が通された部屋からは何も音がしなかった。 不審に思い交代に来た隊員と中を確認すると、その部屋には元から誰も居なかった様だった。 「オイ!! 誰もいないぞ!!!!!!」 「えっ!? な、なんでだ!?!」 「ウッセーな!!!静かにしろよ!!!こっちはやっと眠れたんだ!!」 「オイ!!お前、隣から物音とか聞こえなかったか!!」 「あぁ?! なもん、オレが聞いてるわけねーだろ!!!」 急に騒がしくなった事に、斑柄の獣人が怒鳴ると、同じように隊員が怒鳴り返した。 「・・・どういう事だ?」 「申し訳ありません!!!」 「ああ。先に報告を。」 「はい!!」 呼び出されたシュベールが、報告に来た隊員達から報告を受けそのまま、ピンイとフェイを呼び出した。 「はぁ・・・。あのさー、俺ら寝てたんだけど?」 気だるげなピンイに、シュベールが視線を逸らしながら、ため息をついた。 「・・・コチラとしても、緊急事態でな。 今、ボルテにも隊員を向かわせてるが、その前に確認をしたくてな。」 「・・・確認?」 「ああ。ボルテと君たちが引き渡した獣人の特徴を教えてほしい。」 「「!」」 フェイに寄りかかったままだったピンイの尾がピンと上がる。 ピンイの腰を抱いたまま、フェイがシュベールに問う。 「それは、この騒動と関係があるんだな。」 「・・・ああ。今、周辺を捜索しているが、何一つ痕跡がなくてな・・・。」 「というと・・・。」 「交代の隊員が来た時には、もう遊君の姿が無くなってたらしい。」 「・・・らしい?だと・・・?」 「ああ。部屋の前には見張りが居たんだが、そいつも出入りした獣人の姿は一切目撃していなくてな・・・。それで、連れて来た隊員にも確認したのだが、誰1人として遊君の姿を覚えてないと言うんだ。」 「・・・・。」 「君たちは、ボルテと共に、遊君の姿を見たんだよな?」 「・・・客はなんて言ってんだ?」 「ああ、彼は好みの顔をした雌のハイエナ獣人だったと言っていたが・・・。店の支配人からは、雄の獣人があの部屋を借りたと報告をもらってな。」 その言葉に、ピンイとフェイの顔付きが変わった。

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