49 / 77
第49話:兎まい亭で・・・
「る、て・・・・ボルテ!!!おい!!」
「!!」
パンっと軽く頬を叩かれ、目が覚めたボルテは兎まい亭の椅子に寝かされていた。
「フォックス副隊長と・・・グリズ隊長!!!???」
「オイ! 一体何があった。」
「・・・ボルテ、お前はなぜここに来た?」
フォックスの後で、グリズが腕を組みながらボルテを見る。
「た、隊長が、緊急招集で迎えに・・・」
「えっ? ボルテ、それはおかしいぞ!グリズ隊長は、さっき中央から戻られたばかりだぞ・・・。」
「ですが、今朝ウチに・・・。」
混乱するボルテに、グリズが尋ねた。
「・・ボルテ、お前は何を見た?」
「何をですか?」
「あの者達からの報告だと、あの日警備隊で保護した獣人を正しく記憶している者はおらず、あの部屋に焚かれていた香には、幻影魔獣の毒が微量ながら含まれていた。・・・ボルテ、あの日お前は、何を見た?」
「何をって・・・、あの獣人の姿の事ですか?けれど、それは私の記憶の中にある幻影って事ですよね?」
「ああ、そうだな。幻影魔獣の毒は、見る者の記憶の中に残る姿を写しだすと言われている・・。だから、ラビがナミに似た姿をしたアレに油断してしまったのだろう・・・。だが、ボルテ・・。お前は、誰を見た?」
「誰・・・と言われても・・・。私が見たのは、黒髪に金眼のフィーの姿だと・・・。」
「・・・フィー? それは、お前が保護したあの黒い塊か?」
「はい。あの・・・・、フィーなんですが・・・多分、フィーは獣化した獣人だと・・・。」
「獣人だと?」
「はい・・・。」
「その獣人の姿はどんなだ?」
「姿ですか・・・・?」
「ああ、獣化したというなら、獣化する前の姿も見たんだろ?」
「いえ、見てません。」
「「・・・・。」」
キッパリと言い切ったボルテに、グリズとフォックスの顔が固まる。
先に、動いたのはフォックスだった。
「いや、ボルテ!ならなんで、獣化してるって思うんだよ!」
「フィーは言葉を話せるんで。」
「はぁ!?」
なぜか自分のことの様に誇らしげな顔をしたボルテに、グリズもフォックスも言葉を続けられなかった。そこに、サラがラビを連れて来たのだった。
「フィーって、フィーガお兄ちゃんの事?」
「ラビさん、起きて大丈夫なんですか!?」
「ああ。すまない。オレが異変に気がつければ良かったんだが・・・・。」
テーブル席から、イスを引きボルテの近くに腰をかけると、サラがボルテに近寄った。
「ボルテ副隊長さん、今日は、お兄ちゃんはお留守番なの?」
「・・・今日は?」
サラの言葉に、ボルテの耳がピクっと反応したが、サラはそのまま言葉を続けていった。
「うん。いつも、ランチタイムはお手伝いしてくれて、弟の事も助けてくれたの!だけど・・・今日は、まだ来てなくて・・・。」
「・・・。」
「・・・サラ、かぁさん達の所に戻ってなさい。」
ボルテの様子に、ラビはサラをナミ達のもとへ戻る様に促し、サラは名残惜しそうにしたがその言葉に従った。
ともだちにシェアしよう!